最近、神頼みの回数が多くなってる気がする。

…それ位、私のハートがひ弱な事を示してるんだけどね。









悪夢はスタートライン8














「…分かった。ウーロン茶だね。行って来るよ」

「お願いしまーす」



 パタンッ…


 リーゼル青年と共にようやくカラオケに入り、彼がドリンクバーに行った後、

 私は取り繕っていた顔を思い切り崩して「ハァー」と大きくため息をついた。



 助けてくれ…助けてくれっ!!!(二度目)

 リーゼル青年の歌声を聞く前に、私が先に歌わねばならなくなったのだよ!!


 "何かを得るためには、同等の代価が…"とか勝手に他ジャンルの話思い出したりするけど。

 それなら結構です!ハイリスクなんて、私の人生に既に似合わないんだよ!!




「でも、ジャンケンで彼に負けるとは…」




 青年→グー。  私→ピース(チョキ)

 あぁ…ピース(平和)を持ってしても彼には勝てない事が十分わかりました(意味不)




「……とりあえず、何歌うか考えないと」




 この状況からどんな事をしても逃げられないと判断し、私は検索機能付きリモコンを手に取る。
 
 その瞬間、ドアから飲み物が入ったグラスを持ってリーゼル青年が帰ってきた。




「入れてきたよ。はい、ミナミさん」

「ありがとう、リーゼル君」




 …とか爽やか100%の会話をしているように見えますが、違いますよー。私の心は汗まみれです。


 向かいのソファーに腰掛け、リーゼル青年はゴクリとストローも使わず飲み物を口に含んだ。

 色から言えば明らかに紅茶……なるほど、さすが紅茶万歳のイギリス人(またしても意味不)




「…所で、ミナミさんはどんな曲を歌うんだい?」

「いや……色々ですよ。リーゼル君は?」




 名付けて"オウム返し作戦"成功!!さぁ答えろ〜、答えてくれ〜。




「僕は洋楽の方が多いかな、歌いやすいからね」




 ――にしては日本が随分お上手にみえるんですが?やっぱりお得意の呪文ですかね。

 とりあえず、そろそろ曲入れないと彼に怪しまれる予感がするので、必死に検索で曲を探す。


 もう……いいや。何とでもなってしまえよコンチクショー!!




「…入れるね」




 ピッと言う効果音と共にテレビ画面に曲名が表示される。

 声を慣らす為に最初は比較的歌いやすい曲をチョイスし、気持ちを落ち着かせる。


 …多分、人類初(いや、腐女子初?)赤目青年の前で歌うのです。緊張しないはずがない。



「あのっ!私ヘタクソですかねっ!!」

「…聴いてみないと分からないよ?」


 前奏が流れる中、そんな会話をした。










『   うつろな瞳を 手でこすりながら
  
    世界の果てを見詰めてた


    綺麗なあなたを 無くしたとしても
 
    世界は何も変わらない。


    あのほほえみを あの思い出を…

    心はいつもそればかり



    あなたとの出会いが 奇跡だと思いたい

    想う気持ち 無駄には ならない筈だから

  
    きっと目に見えなくても あなたはそこにいる
  
    ただ世界を 見詰める 僕のそばに…――   』









「……へ、へたくそですよね!スミマセン…」



 顔がどれだけ赤くなってるか想像するだけで……あぁ、赤っ恥。

 思わずストンッとソファーに身を投げ出して現実逃避に走ろうとした――その刹那。




「綺麗な、歌だったよ」




 彼の発言に意識は現実と非現実の狭間からカムバックし、それを必死に理解しようとする。

 つまり…………最初にしてはまぁまぁ受けが良かったと。


ハァーーーーーーーーーッ



よっしゃぁ!!(内なる我が心ガッツポーズ)





「…次は僕の番かな」





 私が歌い終わるのを待っていたらしく、彼はリモコンでピッと次の曲を入れた。

 曲名は「Hope Northern Crown」

 聞いた事もない曲名(それはそうだ。私、洋楽聴かないし)に戸惑いながらも、私は耳を傾ける。




『The one doesn't know the universe grieves for it and shouts... 』




 知らない曲だったせいなのかもしれない…が、一言で感想を言おう。


 か っ こ い い ! !


 やばい、リーゼル青年。普通にかっこよく歌ってます。

 穏やかな曲の方が似合う気がしたけど、それは私の間違いだったぜ!!




「リーゼル君、歌うまいね〜!!」




 歌い終わった彼に対して、私は思わず拍手でコメントをした。

 青年は「ありがとう」と言って氷がかなり溶けてしまった紅茶を一口飲んだ。




「――あらぁ〜。、トミ〜仲良くやってるじゃーん」

「な、渚!?」




 まだ二曲しか歌っていないのに関わらず、遅刻宣言をしていた渚と安城君が

 ドアからひょっこり顔を出して現れたので、私は度肝を抜かれてしまった。




「早かったね。ナギサもケイゴも…どうしてかな?」




 ニタニタ(不気味に)笑いながら入ってきた渚はとりあえず現状説明をする。




「いやぁ、電車が遅くなりそうな事親に言ったらさぁ送ってくれるって言うから、ね。

 圭吾君が乗る予定だった駅は、行く途中の道だったから――こんなに早く着いたの〜」




 ――…それならそうと、もっと早く来て欲しかったよ!!




「さぁ!アタシも歌いたい曲いっぱいあるんだ〜、入れちゃうよ〜」




 そんな能天気にリモコンのありかを探し始める渚に。
 
 私はため息しか出せずじまいだった。









うん、微妙。 途中で出てきた歌詞は、前回の着うたの元曲の歌詞変えバージョンです。 文才無いな…いや、詩の才能? リーゼル君には、ぜひとも『Dani California』を歌って欲しいな。 某漫画が原作の映画の主題歌ですよ。かっこいいんです。 気に入りましたら、ワンクリック!→コチラ!

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