余裕綽々で

私は、「ハリーポッター」と打ち込み――"Enter"を軽く連打した。






悪夢はスタートライン4












「…おぃ――な、ん、だ、よコレは…っ!」



検索結果がディスプレイ一杯に表示され……私は、すぐさま現実逃避したくなった。

まぁ……予想はしてたよ(半分以上はね。それ以外は"ありえないってw"で片付けてた)

でもさぁ。ね――…まさか、本当に出てこないなんて。




「何故だ…何故なんだ……っ!」




目の前に並べられたリンク一覧を見れば、公式サイトへのは勿論。

誰かのブログのタイトルとか、映画感想ページとか、

商品紹介や、サーチサイトのヒットすらない。

替りに出てくるのは…




「全部知らないサイト…ってさぁ……!」




そう、とにかく関係ないもの。


「アメリカの友人ハリーが〜」やら「スポッターの感想」など…

よく分からない世界のてんこ盛りです。



とりあえず、表世界の散策はここまでにして、裏世界の様子を見に行く。

裏世界とは――勿論、二次創作の世界だ。




「…と言うか、ブレイン様のサイト自身が消えてる……」



ブレイン様=ハリポタオンリーのドリーム小説サイト様。

単なるお気に入りとしてでは留まらず、何故かアドレスも打ち込める。

これこそ、ストーカーファンの極みと言える状況さ。


幸い(?)ハリポタオンリーサイト様以外は、他ジャンルまで同時に消されていると言う事は無く。

その場に存在だけしていた。






――…う〜ん。そろそろ怒ってもいいですかね。





やっぱりテメェの所為だろ、リーゼル!

分かってるか!?君が一体何したのか分かってるのか!!


ハリポタに愛を捧げた全ての人間の怒りを一気に受けるんだぞ!




Q.朝起きたら、ハリポタ一色の貴方のサイトが無くなっていました。

  どうしますか?



1.悪い夢だと思って再び床につく。

2.システムの不調だと思って、数分間現実逃避する。

3.犯人を見つけて血祭り&地獄に突き落とす。




私なら、真っ先に3番をやってるだろう。

出来るなら、地獄はアリ地獄とか灼熱地獄とかマイナーな所に落としたいな。

うわー、惨いなー、酷いなー、やっぱりコレは夢だといいなぁ(まだ言うか)




「…あれ、でも待てよ」




突然、気持ちがマイナスへグングン進んでいたにもかかわらず、私はある事に気付き冷静を取り戻す。

そうだ――何かおかしい――と確信すれば、コレは変だ。



《…何で、私だけ……ハリポタの情報を覚えてるんだ?…》



うん、そうだね普通におかしい事ですね。


ネット上から「ハリー・ポッター」に関する全てのデータを消去出来ちゃう輩なんだよね?

……なら、普通に私の記憶だって操作出来るはずだろう?




「難題だなぁ…」

「――…何が難題なんだ?さん」




隣に突然現れた安城君(リーゼル青年付き)に対し、

私は素早く見ていたページを最小化して微妙な笑みで「何にも〜」と答えを返した。


とりあえず、何を見ていたかは知られなかったみたいなので、とりあえず安堵する。




「…そう言えば、僕の席は何処なんだろう」

「んー、多分空いてるからさんの隣なんじゃないか?」




――はいぃぃぃ!?




心の中で絶叫中(ストップボタンはありません)

えっ、こんな私の癒しの空間でも緊張せねばあかんのか!?

私の胃に穴が開くぞ!何言うんじゃ、安城君!!




「いや、先生に聞いてみないと分からないでしょ?もう少し待ってみたらどうかなっ?」

「……あぁ、君が転変入してきたリーゼル君だね!」




…と、何とか言い逃れしようとしてたら情報教師の半田が現れた。

(ちっ、タイミングが悪い事で有名なだけあって…なんでこんな時にっ)



「はい、よろしくお願いします……所で、僕の席は一体何処でしょうか?」

「あぁ、なら三波の隣がいいだろう!」




このやろーっ!!嫌な運命だー!!

何で俺(一人称が違うぞ)の隣なんだよっ!!変えてくれよ、半田!




「三波はパソコン操作では群を抜いているから――リーゼル君。何でも訊くといいぞ」

「分かりました」




半田はああ言うが、リーゼル青年の隣になるんだったら、授業サボりますよ。


しかし、アッサリ隣に青年が座ってしまったので、事はこれでおさまってしまった。

(私の心はまだ大いに荒れてるんだけどね)




「…パソコンの経験は?」

「まぁまぁ、ってところかな?」




そう言うと本体の電源を入れ、そして画面のスイッチもしっかり押して起動するのを待つ青年。

……どうやら、一度は触ったことがあるようだ。




「所で、ミナミさんは先生に褒められる位パソコンの扱いがうまいのかな?」

「ううん。先生はオーバーなだけで……専攻学科では私だって、まだまだだよ」



えっと、我が校には週に三日の午後の時間に「専攻学科」と言う時間を設けているのです。


つまり、簡単に言えば選択授業で将来やりたい事の初歩的な事を教える特別授業の事。

私は「情報技術」を選択しているけど、他にも「経理」「進学」…と、いっぱいある。




「と言う事は、『情報技術』を選んでるのかな」

「あ、専攻学科って先生から話聞いてる?」

「うん、僕もそこだから」

「ふーん、そうな――…はぃ?」



・・・・・



すみません。やっぱりこの人の隣り嫌です!

変えてください、ついでに今の発言は無かったことにしてください。




「よろしく。ミナミさん」




ニッコリ微笑んで、そう言い切ったリーゼル青年に、

私は――これからも翻弄されるんだろうな。と、素直に思いました。







わーい、リーゼル青年≒リドルである可能性はほぼ99%になりましたー。 しかし、この話行き当たりばったりだからな〜。 ちなみに『Q.朝起きたら〜』は、私なら2ですね。 気に入りましたら、ワンクリック!→コチラ!

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