寝不足だと思われる両目を擦っても。
そこにいる"転校生(仮)"の姿は変わらなかった。
悪夢はスタートライン2
ざわめく生徒達を横切り、彼はスンナリ私の後の空席に付いて必要最低限の物を机にしまい始める。
しかし、私の心境は相変わらず只一つ。
『きゃつは、一体何者だ!?』
と言う事だけになる。
いや、待って欲しいな私のハートとメモリーよ。
確かに後席に着いている彼は某児童書に出てくる(偽)優等生に似ている気がするよ。
だが、判断を誤ってはいけない!!
黒髪なんて日本中に、否世界中に腐るほど存在しているのだ。
黒髪+美形+赤目=…にしてしまったら脳内ビジョンには一人しか写せなくなってしまうけど。
とりあえず落ち着け、私。決して私は腐女子の末期患者なんかじゃないんだ!
と、既に頭の中では自分の気を落ち着かせるのにフル稼動中な私の耳にチャイムが入ってきた。
「はぃ、静かに〜!出席取るぞ〜?」
男勝りな岡山(言っておくが、女教師である)は元気な声が自慢なだけで、生徒の間では評判が悪い。
そんな先生が担任の私達のクラスは、別名「生き地獄組」とも言われたりする。
「由原、渡部〜……おっ、そうだ。今日から一人仲間が増えたぞ!ほれ、自己紹介だ」
そう言って、岡山先生に促され後席の○○○のそっくりサンは(伏字必要性なし)立ち上がり、言う。
「今日からこのクラスにお世話になります…トミー・リーゼルです、よろしくお願いします」
○○○のそっくサン改めトミーは、そう言い終るとニッコリ微笑んで再び席に着いた。
すると、岡山先生の盛大な拍手以外に、疎らだが小さな歓迎の拍手が聞こえた。
――…いや、待て私。ツッコミ所をスルー仕掛けてるじゃないか。
なんだよ。トミー・リーゼルって!!似てないか?
ぶっちゃけ長音記号と少し名前変えればやっぱり誰かさんの名前じゃないか!?
いや、考えすぎか?脳内でこれだけの思考文を生み出せる私が駄目なのかもしれないっ!!
密かに落ち込みながらも、そうしている内に朝のショートホームが終了。
それと同時に、積極性抜群の安城君が(便利な事に私の思う内を)質問する。
「よっ、俺"安城圭吾"って言うんだ。ヨロシク!――所で、目が赤いのって珍しいな〜」
そう言うと、安城君はトミー君(※仮)の瞳を何とも不思議そうに見詰める。
やったね、私!便利な安城君サイコーだね。
「やぁ……あぁ、この目はカラーコンタクトだよ。僕、赤が好きなんだ」
「そっかぁ!だよなぁ。だって、赤い目の奴なんてあった事無いからさ〜!!」
岡山先生の子分になれそうなハイテンションで質問してくる安城君に、
トミー君(※仮)は嫌そうな素振り一つ見せずに答える。
……なんだろう。あの鉄の仮面ぶり。あの爽やか笑顔の裏にきっと(待て)
しかし、そうなれば彼のリ○ル疑惑(勝手に命名)は格段に薄くなる。
――…安城君の言うとおり、本来人間の持つ目の色素に"赤"は存在しない。
もし、本来から目が赤い場合は大体が病気等の原因でしかない事で、
それこそ非現実でもない限り"赤目"は存在しないはずだ。
(いや、単なる豆知識ですよ。私)
「へー、安城君。今回の転入生は美形なんだね〜、アタシのクラスにもその美貌を分けて欲しいねー」
私と話すために現れた筈の渚が、後席の美形青年に目を奪われ、安城君経由で話に加わる。
え、やばくない?この調子だと必然的に話さなきゃいけない状況下に置かれるんじゃないのか?!
逃亡者になりたい衝動にかられ、とりあえず廊下にある自販機に飲み物を買いに出る。
「やっぱり…悪夢だ」
『悪夢は継続すればする程、その影響力はアップするのです』
誰がこんな言葉頭に浮かべろって命令したんだ。いらん、こんな言葉(今は特に)
私はハァーーーーッと思わず廊下の壁に手をつけて疲れを緩和させる。
「疲れてるみたいですね」
「えぇ…私は基本的に疲れやすいんです……よ?」
答えておきながら、一つ思う。
クエスチョン:私は一体今誰に返答し、その上隣にいるのは一体誰ですか?
よくあるシュチエーションに思わず瞬時に右を向けば――リゼールさん(財布持参)を発見。
やはり、私から話し掛けなかった事もあって完全に敬語であるのは肯定しました。
「安城君と渚はどうしました?」
「何でもケイゴがナギサにレポートについて話し始めたので、僕も飲み物を買いに」
硬貨を入れて彼が選択したのは――まろ茶。
まぁまぁのチョイスですが、貴方外国人設定じゃありませんでした?
そんな内なるツッコミをする物の、彼は飲み物を取り出した後すぐ教室へ戻っていった。
……なんか、意外にも違和感が彼から感じられない私は既に廃人かもしれません。
「あっ、〜。どうしたの〜、顔色悪いねぇ?」
時限目開始のチャイムがなる寸前、渚が教室から出てきて私に話し掛けて来た。
…とりあえず、私の廃人振りをしってる渚だ。脳内思考をぶちまける。
「ねぇ……リーゼル君って、誰かに似てると思うよね?思ってくれるよね?」
「えっ、誰の事〜?赤目が綺麗なだけでそれ以外は別に普通の外国人にしか見えないよ〜?」
いや、待て渚ちゃま。
あんたに私、ハリポタのDVD全部貸したよね?原作だって読ませたよね?
一緒に四巻のゴブレット映画館に見に行ったよね?
忘れたとは言わせないぞ。私の腐った会話をアンタは何度も聞いたことがある筈だぞ。
「いや…さ……トム・リドルに似てない?ハリポタのさっ」
私が思い切ってそう聞くと何故か本人はうーん…と悩みこんでしまった。
飽きれているのか、それとも私の質問に処理か出来なくなったか――だが、それは一言でハッキリした。
「誰だっけソレ。って言うか、ハリポタって何だっけ?」
悪戯にしては、下手な嘘の付き方だなと、心のそこから思った。
雰囲気から言ってつづけられそうだったんで、とりあえずアップ。
赤目様疑惑を持たれるトミー・リーゼルさん。
そして、何故かハリポタ情報を忘れる友人……どうなる事やら。
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