闇夜に彩が現われ
そして――幻のように消えた。
悪夢はスタートライン16
バァンと…心臓にはとても悪そうな音の数秒後、赤と紫の花火が夜空に咲いた。
あー、綺麗だなぁとぼんやり眺めていると、
隣のリドル(私的には隣になりたくなかったけど、成り行きで)が言ってきた。
「日本の花火は、すぐ消えるんだね」
「え、それって世界共通じゃないの?」
そう私が聞くと、彼は花火の音と共に「魔法界だとね」と言った。
あ、そっか。何でも有りだもんね。持続花火だって作れるわな。
何となく魔法界についてきけずにいた私は、チャンスだと思って質問する。
「こっちとあっちだと……どっちの方が生きやすい?」
打ち上げ音の間隔が狭くなるのを聞きながら(多分スターマインだろう)
私は花火の色が映る彼の顔を見た。
「どっちもどっち……かな?」
何とも意味ありげな笑みを浮かべて、
リドルはそう切り返した――うん。うまく逃げたな。
まぁ、私がそんなに深い場所まで探る権利なんてないから、やめておこう。
彼から目をそらし、山場を迎えたスターマインを眺める。
私達がいる河川敷の遥か遠くで打ち上がる花火は、本当に綺麗だ。
毎年の事だけど、圧倒される。
「花火って、流れ星みたいね……自分を焦がして、最後は落ちるだけって言う所が」
思い出す、去年の事。
「せ、切ない事言うねっ!も」
「……なんか無心で見てたらそう思ったの」
バーンと、再び夜空に舞う炎の花びら。
その中の翡翠を目で追えば、瞬きの間程で消えた。
「だから、忘れちゃ駄目よ。今夜の事」
「……さん?」
「え、あ、ごっごめん」
よほどぼーっとしてしまったらしく、私の顔を覗き込んでいた彼にようやく気付いた。
私はすぐさま頭に残る記憶を消し去り、彼の顔を見つめ、言い訳をする。
「なんか、去年の事思い出してたんだ。楽しかったから」
「――本当に楽しかったから…だけなのかい?」
ツンッとした鋭い彼の声が、私の心に焦りと不安を与えた。
何故だろう。何かを悟られた気がした。
「何でそんなこ「っ〜!」
私の声を遮って、別の友人の所に行っていた渚が帰ってきた。
少し息が荒いが、何故かその顔は素晴らしい輝きを放っている……だ、大丈夫でっか?
私と同様に、リドルも安城君も渚を見つめて、発言を待った。
「む、むこうの橋の下で、今日のコスイベントで見ためっさ綺麗な人いるって!」
「なにぃぃぃぃ!?」
私は(自分なりに)できるだけ声を押さえながら叫んだ。
……軽く説明すると、毎年『県花火』は、
花火大会は勿論の事、フリマ、ライブ、ダンス等…てんやわんやのすごい祭りなのだ。
そして、その中に何故か(腐女子狙いの)コスパレードがあるのだ。
「なんか、かなり盛り上がってるみたいっ!行ってみない?!」
「行く〜っ!」
素早く立ち上がり、私は人の間を縫って渚と合流し、ウキウキ気分で歩き出す。
しかし、急にその気分が薄れ、何となく後ろを向いてリドルを見た。
――彼は私の何を知ってるのだろう。
「〜、置いてっちゃうよっ!」
「あ、はーい」
妙な不安に駆られながら、私は渚の後を追った。
〜§〜
「……ケイゴ」
「ん、なんだ?」
嵐のように現われ、そして珪を連れて去っていった渚の所為で
ツーショットになった途端、リドルが圭吾に声を掛けた。
「さんには……去年何か辛い事でもあった?」
先刻の珪とリーゼルの会話を微かに聞いていた圭吾は、
うっと答えを詰まらせ、間を空ける。
自分からその事を話していいのか、圭吾は悩んだ。
何となく、触れてはいけない気もしたし、実際に自分はその時、珪と関わりもなかった。
・・・しかし、後から来た彼に話さないのも、不公平だとも思う。
「…俺は、今の学年から転変入生として入ったから、詳しい事はあまり知らないんだ」
バーンと、再び騒がしいスターマインが始まる。
しかし、二人の辺りには妙な静寂だけが流れていた。
「だけど、三波さんに仲がいい親友がいて――でも、その子は今学校にいないのは知ってる」
「…どう言う事?」
「…――行方不明なんだ。跡形もなく、いなくなったんだ」
闇に沈んだその真実が、現れる。
炙り出しのように、じわじわと・・・・。
どうやら、最近私はシリアスを書くのが多くなったみたいです…。
ゆ、許して読者様っ!!
次はシリアスから逃亡するから、ええ!
…さて『県花火』…本当にあったらいいなと思ってしまう私が居ます…
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