夕食が始まる直前……とドラコは大広間に歩いて向かっていた。


辺りにはカボチャ特有の甘さが溢れていた――今日はハロウィンなのだ。



「う〜ん、これに醤油と酒と少しの塩を入れれば……あぁ、懐かしいなぁ煮物」


「何を言ってるんだ?…そう言えば、アイツは今日は来ないんだな」



ドラコが言う"アイツ"とは勿論のことだが、それはも気になっていた。



「どうしたのかな?何時もなら…「クリちゃんっ!」



後ろから、大声が聞こえてが振り返ると、声の主のが此方に走り寄ってきた。

しかし、その表情には何時もの明るさは消え失せ、とても焦っているオーラが出ていた。



「クリちゃん、ハーマイオニー見かけてない?!」

「ううん。ドラは見てない?」


突如振られた話題に戸惑うドラコだが「僕の知った事か!」と言葉を返した。



「ハーマイオニーとハリー達がケンカちちゃってさ…んで、ハーマイオニーが行方不明で……」

「そっか、俺も会ったらサックに知らせるよ」

「うん、よろしくなクリちゃん!――じゃっ!」



はさっきより顔色を一段階良くして、生徒達の流れに逆らって姿を消した。



「……アイツ。何であんなに必死なんだ?」

「サックはほっとけないんだよ。自分の身の回りで、誰かが幸せじゃないのをね」



はニッコリ笑って「勿論、俺もその志は持ってるけどね」と言って再び歩み始めていた。





〜§〜





ざわめきで満ち溢れていた大広間に――それは突然起きた。



バタンッ



「トロールが、ち、地下室にっ!!」


すごいヒステリック的な顔で現れたクィレル先生に、みんな一瞬固まり、彼の発言に恐怖した。

しかし、そんな中は急いで席から立ち上がると、一目散に大広間の出入り口へと走り始めていた。


それに気付き、ドラコが慌てて叫んだ。



「!何処に行くんだっ!?」

「この事を、サックは知らないんだ!!」



ドラコの心配を他所に、は大広間から飛び出すと、猛スピードで廊下を走っていった……。





〜§〜





「あ゛〜、ハーちゃん!貴方はいずこ〜!?」


夕食時、誰も居ない廊下ひたすら走って、ハーマイオニーを探すが居た。

どーしてもハーマイオニーと会いたい理由があって、こうして隅々まで探し回っているのだ。



「でもなぁ……一体何処に…ん?」


独り言を口にしていたは、急に足に伝わって来た振動に気付き、その場で立ち止まった。


――…曲がり角の先の廊下から、異臭と共に何かとても大きな奴が近づいているのだ。



「うぁ、やべぇっ!」


人間にしては大きすぎる影を確認した後、はとっさに近くにあったドアの中に入った。

相手の様子を見ようと、ドアの隙間を少し開けて様子を伺っていたが――。



「だ、誰!?」


「…え、ハーマイオニー?」


思わず辺りを見回せば、そこは何故か女子トイレの中だった。


ハーマイオニーが中々見つからなかった理由を知ったに、奥のトイレの個室からハーマイオニーが叫び訴えた。



「ハ、ハリー達みたいに、だって私が嫌いなんでしょ!?…早く出て行ってちょうだい!」


「違う、ハーマイオニー!ハリー達がどう言おうと、オレはハーマイオニーが好きだっ!」


…間違った捉え方をすれば、愛の告白にも聞こえそうな発言をするが、は全然気にしていなかった。



「物知りで、明るいハーマイオニーは、オレから見れば全然気取ったヤツ何かにみえないっ!」


人を説得するのが、とにかく下手なの精一杯の言葉だった。

しかし……ハーマイオニーの答えを聞く前に、背後から物凄い音がした。


瞬時に振り向くと――そこには自身絵でしか見た事がないトロールが現物が。



「…ハ、ハーマイオニー。出てこない方がいいかも……」


「ど、どうしたの?すごい音が…」






――時、すでに遅し。






「キャーーーッ!」


「誰じゃ、このデカブツ連れ込んだヤツはぁ!?」


ハーマイオニーの悲鳴より、の叫びの方が数倍でかかった。

しかしその所為でさすがにトロールも二人に気付き、がむしゃらにこん棒を降り始める。



「危ないっ!」


ハーマイオニーに迫るコンクリート片に気付き、は前に出て瞬時に呪文を唱える。



「プロデコ!」


見えない壁によって、何とか破片をはじいたが、まだ使うには早過ぎる呪文に、は苦しむ。



「ハ、ハーマイオニー!杖ある?!」


「えぇ、あるわっ!」


「同じ呪文唱えてくれ!!それだけでもかなり違うからっ!」



その一言に、ハーマイオニーも杖を取り出し、一度も使った事のない呪文に果敢に挑戦する。

しかし不安定な呪文もそろそろ限界が近付いていた――その時。




バタンッ


「ハーマイオニー!っ!大丈夫!?」


「…おぃデカブツ!こっちだこっち!!」



ハリーとロンが女子トイレの中に入ってきて、トロールの目をひきつけ始めた。

ハーマイオニーはその場から動き、援護しようとしたが…に止められた。



「今オレ等が動けば危険だっ!……ハリー達に任せよう!」


「で、でも」


とても心配しているハーマイオニーだったが、の言うとおり、ハリー達は見事にトロールを倒してしまった。


トロールの沈黙を確認すると、ようやくは呪文を解いてハリー達に声を掛けた。



「遅かったなっ!救世主達は、もっと早く来るのがモットーだろっ!?」


「……これでも俺は早く来た方なんだけど、間に合わなかったみたいだね」


声のする方を見ると、そこには息を切らし、額に汗をかいたがドアから入って来ていた。



「――…オレにとっては、クリちゃんは何時も救世主さっ!」

「…なんか、ただのピンチヒッターにしか聞こえないけど?の黒々スマイルにたじたじになるを見て、思わず三人は笑い始めた。

そして、当人達も笑う三人につられ、トイレ中にみんなの笑い声が響き渡った。



――…この後、教師郡が来る事など、すっかり忘れて……。














ギャー長い!キャンパスNOTE様三ページ分です! いやぁ、学校で書くのも結構楽しいのね〜。 の出番が若干少なかったのは……飛行訓練の話題で結構目立ったからw んで、今回はメイン。

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