キィーッと、老朽化が進んだ木製のドアが開き、カランッと小さな鐘が店内に響いた。


少し湿っぽい店内に入ってきた赤紫と、麦色の髪の少年――は興味津々の様子だ。



入学してから初めての週末、二人は引率の教師と共にダイアゴン横丁へ買い物に来たのだ。


見た事の無い物に目を輝かせるに比べ、は人ごみで疲れて居るようだ。


そんなよく分からないテンションの二人の引率であるクィレル教授は、おどろおどろしく言った。




「あっ、あまり店内の、も、ものを触らないように!」




しかし、威厳と言うものに欠けている教授の声など耳に入っていない様子の二人だが、

その前に突如現れた店主によって触れる機会が無くなってしまった。




「おぉ、よく来なさったなお若いの。アルバスから話は聞いとる…」



「…よろしくお願いします」



「では、早速採寸を……」




採寸と言うには測る部分が多い気がしたが、それは二人の持ち前の"気にしない精神"で吹き飛ばした。




「…そう言えば、学校が始まってちぃと経っとりますが、授業の方は?」



採寸を終え、取りあえずうず高く積まれた箱の前でうろうろしている店主オリバンターは二人に聞いた。




「まだ実習には移ってない科目が多いんで、大丈夫です」



「…それに、先生方も俺達の事配慮して頂いてますし……」



に続き、もそう説明している内にオリバンターは黄ばんだ白い箱と茶色い箱を持ってきた。



「…では、ミスター・アンジョウはこの杖を振ってごらんなさい。楠木に鳳凰の尾羽、二十八センチ」



茶色い箱から取り出された藤色の杖を渡され、ワクワクした面持ちでは杖を軽やかに振った。


――…すると、杖の先からすぐさま揺らめくオーロラの輝きを放つ物が現れた。



"中々自分に合う杖は決まらない"と仲のいい寮生から聞いていたは、驚いてその場で固まっていた。


…しかし、それ以上に素晴らしいリアクションをしていたのは他ならぬオリバンターその人だった。




「長い間この店をやっているが……こんな事は初めてだ!一回で杖が決まるとはっ!」


「う〜ん、オレBだから色んなヤツと相性サイテーなんだけどなぁ……」


「…それさ、多分関係無いと思うよ。サック」



驚いて近くの机に寄りかかる店主を尻目に、何故か血液型の話をしているだった。



「……そ、それでは、ミスター・フジヤにはこの紅葉に白虎の牙、二十六センチはどうでしょうか」



二番手であるに、何故か期待の視線が集まり、当の本人はかなり緊張しているようだ。


は思った――もし、みたいなのじゃなかったら――しかし、振らない訳にも行かずブンッと振った。



……しかし、の心配は見事にはずれ、杖の先からは虹色に煌く星屑が溢れた。



「…あ〜、良かった…なんか一発オッケーじゃないとやばそうだったから…」


「いや、クリちゃん。そう言うわけでもなかったんだけどサー」




「……オッ、オリバンターさん?具合でも、わっ悪いのですか?!」



前代未聞をやり遂げたのんきな二人と対照的に、

二回連続ピッタリ相性抜群を選んだ店主を心配したクィレル教授は小さく声を掛けた。



「…ま、まさかっ……こんな事が起きるとは…」



言い方的に"杖との相性抜群を探すのが生き甲斐なのに…"と語っている様な店主だが、

ぐだぐだ落ち込んでいるわけにも行かず、二本分の杖の会計をする。


そんな落ち込んでいる店主を見たクィレル教授は、店主の白髪が一気に増えた様に見えたらしい。




「「…いえ、多分オリバンターさんの腕が凄いんですよ。腕が」」




口を揃えてフォローするだが、ぶっちゃけフォロー所か当人を落ち込ませている様にしか見えない。


ニコニコと、楽しそうに笑って購入者二人が去った店内は、

開店以来始めて"物が散らかっていない店内"となっていた……。









在りますよね。 探すのにめんどくささを感じていながら、一発で見つかると悲しくなる時って。 杖の話は、又続くかも。(B型様、ごめんなさい) 14000Hit ありがとうございます。

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