「……何でこう言う状況に陥ってると思う?クリちゃん」


「俺、出来れば現実逃避したいな〜」


「――…抜け駆けか!?ズルい!」



そんな会話を小声で繰り広げていた幼くなったに、列を率いていたきつい顔の教師はキッと睨んだ。

それに気が付いたを小突き、二人とも最小音量で言い争いを再開した。



「…だって、蝋燭は浮いてるし……みんなコスプレしてるしさぁ…」


「多分アレが普段着なんだろ…オレ等の格好だって他人の事言えないぜ?」



は肺活量一杯に息を吐き、顔を両手で押さえて先に精神世界へ旅立った。


しかし、何故かそんな事を気にせずはウハウハとした気持ちで、

前方で何が起きているのかキョロキョロと見る。



「…では、これから組み分けの儀式を執り行います――アボット・ハンナ!」



……これがダンブルドアが言っていた"組み分けの儀式"であると知ったが、

隣のネガティブオーラを大量生産中のに訊いた。



「なぁ、クリちゃん。何なんだと思う?"組み分けの儀式"」


「…ようはクラス発表。それをあえて"儀式"って言う名前で神聖な雰囲気を出してるだけだよ……」


「なるほど!さすがクリちゃん!!」



小声で笑いながらバシバシとの背中を叩くに、他の新入生からは不思議な眼差しを受けていた。

しかし、そんなこんなで組み分けは着々と進行して行く…――が。




「ポッター・ハリー!」




その女教諭の発言に、組み分けを心待ちにしていたも、

相変わらず混乱しているも顔を上げて、呼ばれた当人の顔を見詰める。


日本人の様な鴉色のクセのある黒髪に、翡翠の瞳が輝き、

そして額に掛かった髪の間から稲妻の傷が歩くごとに見え隠れする――ハリー・ポッター。



「…ハリーポッターって、児童書であったね。サック」


「映画でもあったな……此処ってその関係の世界なのか?」



辺りが騒いでいるのもお構い無しに、二人は"どうでもいいや心"が強く働き、その場を過ごした。


二人の番は、急な入学決定の為最後だとダンブルドアから話を訊いているが、

最後にポツンと残された時は、素直に他生徒の視線が痛かった。



「…アンジョウ・!」


「……行って来るぜ、クリちゃん!」



キラキラスマイルをに放ってから、は新入生では例を見ない様な軽やかな足取りで前に出た。



「お座りなさい」



破天荒な行動ばかりしているに対し、既に"問題児"のレッテルを張り出した副校長のマクゴナガルは、

少し冷たい口調でに椅子に座るように促す。


まるで幼稚園児の様なノリで(外見が何時も見ているよりかなり幼いので、には幼稚園児以下に見えたが)

汚れが目立つ年代物の丸椅子に腰掛けると、頭の上に"組み分け帽子"と言う物を乗せられた。




《ほぅ、これは珍しい》


《……スッゲェ!!レアな体験してるよオレ!!》


《…私を差し置いて感激しないで欲しいのだがね》



その声に遅らせながら漸く気が付いたは、少し落ち着きを取り戻して組み分け帽子に自らの要望を言う。



《イタチハトの寮は出来れば嫌だなぁ…》


《…イタチではなく穴熊。ハトと鷲を見間違う者も初めて出会った……》


《…ハッキリ言うと、次のクリちゃん…藤谷と同じ寮なら何処でもいい!》



ズバリッと(残念!と言う効果音がお笑い番組の影響で聞えた)そう言い切るだが、帽子は正論を返す。



《…私は、その者にあった寮を見定め、この場にいる者達に宣言する存在なのだ》


《……へーへー、分かりました――いい寮にしねぇと滅するからな…》



最終手段(を出すには少し早いだろうが)の"脅し"を使ってみるものの、帽子はハァーと深い溜息をついて叫んだ。




「グリフィンドール!」




歓声と共に、小さなブーイングが起きている事に若干驚きながらは空いている寮の席に着いた。



「やぁ、ボクはロン・ウィーズリーだ!よろしくね」


「…ハリー・ポッターだよ。よろしく!」



いきなりの大量の挨拶に心底驚きながらも、

営業スマイル(本人曰く"ミュージシャンとして当たり前!"らしいが)で、返事をする。



「ヨッ、オレは・アンジョウだ。よろしくなぁ!」


「…変わった名前だね。にほ「わりぃ、の組み分け見ていいかな?」



そう言って、他の寮生との交流の前に相棒の組み分けを見届けようと首を長くする。



「知り合いなの?」


「……そう、オレの相棒!」



自慢そうに答えたの笑顔に、女子寮生がときめきを覚えていたが、本人は首をの方に再び固定した。



「・フジヤ!」



独りで残され、大量の視線を受けていたは、ほっと胸を撫で下ろして帽子の前に進み出る。


帽子を被せられ、帽子の反応(見ていたので、大体の流れは分かって居る所為か余裕らしい)を待つが、

何故か一言も"組み分け帽子の声"が聞えず、おのおのとは質問した。




《……あの、俺の寮は何処でしょう?》


《…いや、困った困った……》



相手を待たせているのに、ぐだぐだ悩んでいる帽子に腹が立ち、は鋭い言葉で問い質す。



《…俺が待ってるのに、何で勝手に悩んでるんですか?》


《いや、失敬……君の前者に"君も自分と同じ寮に入れてくれ"と頼まれのだが…》


《……、ですか》



は、軽い溜息を付いて既に寮が決まり席に着いているを見る。


はじぃーっとを見詰め、自分の服を強く握り締めている――が強く何かを思っている時の癖だ。


自分をが見た事に気付いたは、微かに頷き、時を待っている。



《…俺も、と同じ寮がいいです》


《しかし、あの寮は君に適していない…別れも、試練なのだよ》



どう言う意味かが訊く前に、帽子は高らかに宣言した。




「スリザリン!!」




は、一瞬の出来事に動揺しながらも帽子を取られ立ち上がり、言われた寮に足を進める。


席に着いた瞬間、の居る席を、は見た――前屈みにテーブルにへばり付き、口から妙な色の霞を出していた。




――…後で心のケアに行こうと、は決め、目の前に沸き立った料理に手を伸ばした。







は、ハリポを知っている様ですが、 ぶっちゃけたしなむ程度です。 は、結構冷たそうなキャラっぽく見えますが、 実は心の底からを愛(!?)しているんです。

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