言い様の無い感情が、との中に集結して行く……そして、は急に行動を開始する。 通学用の堅苦しくないカバンの中から新旧どちらだか判断しにくいケータイを握り締め、 一拍開けて、ケータイのデスクトップ画面を見た。 「…圏外……だろうなぁ…」 一番、この状況で救いとなる物にあっさり蹴り落とされたは、ハァーッと溜息をつく。 「…歩いて此処まで来た訳じゃないし、もし他の方法で此処に来たんだったら――それは"普通"じゃないよ。サック」 「何でなんだ。クリちゃん? もし、オレ等が此処にいるのが夢でも何でも無かったら、移動するのに約……近場でも三十分必要だぜ?」 確かに、の言う通りだ。二人の学校は都心の一角にあるので、こんな場所を近場で探そうとするのも困難だ。 も一度は、木しか見えないこの場を見渡したが、静かにに答える。 「えっと、俺達が乗ろうと思ってたバスの出発時刻が午後三時五十五分…んで、今が四時ジャスト」 「うぁ…」 「……五分じゃ、流石に無理でしょ。日付も今日のまんまだし」 そう言って、隣りに並んだには少しガタが来ているデジタル時計の液晶を見せ、情報を共有化する。 この時計が、今居る"此処"とはあっていなくても、利用価値は十分にあるのだ。 「――…じゃ、どうしようか」 一番考えたくない事を平気で訊いて来るに、は動揺しながらも答えを出そうとする。 「…よ、よぉしっ、歩こう!」 「……確かに、此処にいても何にもならないみたいだからね」 確かに、周囲の情報収集の為にも歩くのが一番だと思われる…――外部情報が一切無い二人にとっては。 転倒の衝撃で周囲に吹き飛ばされた通学用カバンと、彼等愛用のギターが納められるケースを背負い、 二人の出立の準備は完了した…あと、服に付いていた微量の砂も綺麗に払い落として。 「どっち行こうか?」 「…あっち!」 勢い良く、ズバシッと指をさす方向には、特別な物も無さそうなので、は試しに聞いてみた。 「何であっち?」 「……オレの鋭い勘!」 ……一瞬、本当に一瞬だけ――はがこんなに無謀な人間だっただろうかと思ってしまった。 しかし、それに反対する理由も無いのではニッコリ笑って言う。 「じゃあ、行こうか」 ――…そう言った刹那。 「ほっほっほっ、そっちは危険じゃぞ?」 「「!?」」 突如、後ろから自分達以外の声がしたので驚いたがすぐさまそちらを向く二人。 そこには、この森を歩くのにはとても不似合いな格好をした老人が立っていた。 白く長い丈の布を纏い、それと同じ程極められた白い髭と銀縁の半月眼鏡を掛けている。 ……どんなジャンルに振り分けていいのか分からない、老人が立っていた。 「…貴方は誰ですか?」 さっきの穏やかでやんわりとした声色から一変し、は冷たい言葉で老人に問う。 明らかに現れた瞬間気配が一切無かった…口調と違って、きっと只者ではない。 「…ワシはアルバス・ダンブルドアと言う。君らが森の中で迷っているのをワシのペットが教えてくれてのう。 この森はとても危険じゃ。よければ、ワシの客人としてこの先にある場所で話さんかの?」 老人の誘いに、二人は戸惑った。が、先陣を切ったのはだった。 「ダンブルドアさん……行ったら煎茶だしてくれる?」 ――…無謀な発言第二段を聞いたは、思わずの隣で(本人に気付かれぬ様に)溜息をついた。 しかし、そんな発言をしても年の功なのか知らないが、ダンブルドアは愉快そうに笑って答えた。 「煎茶とな?…東洋の茶の事じゃのう。客人の君らの為じゃ、出そうかのう」 「おっしゃっ!……行こうか、くりちゃん!」 何故か煎茶好きのは、ダンブルドアの発言を聞いた瞬間フィーバーモードに入り、 まるで、物で釣られた幼稚園児の様な幼さを見せて歩き始めたダンブルドアの後に続いた。 …そんな姿を遠目から見ていたも、いざという時の保護者として、二人の後に付いて行った。
予想を見事にはずして、短め。 でも次回が長いので、お許しを。 ……独り言だけど、校長ってO型だとおもう。