「ねぇ、知ってる?ハッフルパフのアンナが、レイブンクローの四年生にプレゼントあげたって話!」


談話室に入ってきた刹那、そう大声で話しかけて来たラベンダーに、ハリーとロンはぶっきら棒に一言。



「「知ってるよ、何度も聞いてるよ」」



そう言うと、肘掛け椅子の向こうから覗かせていた顔をさっと戻した。

そんな態度の二人に、ラベンダーは一瞬ぶすくれた顔をしたが、すぐさま他の寮生の所へ言って噂話に花を咲かせていた。




「ねぇ、ハリー…なんで、女子って…」

「うん、言いたい事は分かるよロン――なんで、こんなに噂好きかって事でしょ?」

「当たり……確かに、バレンタインだけどさ…」



そういい終わると、ハリーとロンは盛大にため息をついて更に憂鬱の加速を促した。

確かに、ハリー達の言うとおり今日の女子達は口を開いた瞬間に噂話しか出てこない。

それも、色んな女子から何十回と同じ出来事について話されれば、対応がガサツになるのも、納得できる。

二人は、密かに談話室の隅でティータイムをしながら、時の経過を望んでいたが…。



「あら、ハリー!ロン!ちょっと聞いて!」



……完全にハリーとロンにだけ話すのが前提で近付いてきたハーマイオニーに、二人はさり気なく嫌な顔をした。

勿論、鋭いハーマイオニーはその原因も知っていたので話しを進めた。




「さっき、バーバティから聞いたんだけど。今、――追われてるらしいの」

「「知ってる……って、えぇっ!?」」



ラベンダーと同じフレーズで過ごそうとしていた二人だが、以心伝心で驚くのも被った。

ハリーが素早くハーマイオニーに詳細を聞く。



「そ、それってどう言う事?!」

「うん、なんでも"二人は平均五人の生徒に追われて、廊下を駆けずり回ってる"って話よ?」


「……南無阿弥陀仏」



ロンが、に教えてもらった言葉を唱え、合掌をした。





〜§〜





プレゼントを持ち、血眼になって校内を徘徊しながらを探す女子生徒達だが。

その賢明さとは裏腹に、二人は全くと言っていいほど姿が見えなかった。




「……校内探してるだけじゃ、俺達は見つからないのにね」

「プレゼントは嬉しいんだけど…なんか、こう"逃亡犯"みたいな気分になって逃げちゃうんだよなぁ」



そんな会話を繰り広げる二人に、容赦なく二月の風が吹き付ける。

…無理もない、二人が居るのは校庭――の上空。


吹き荒れた突風に、は一瞬箒のバランスを崩したが、すぐさま立て直して会話を続ける。




「あぁ…明治、ロッテ、ブルボン、チロル、森永、ネスレ…不二家に、グリコ」

「……テーマは"有名なチョコレート菓子会社?"でもネスレって…コーヒーじゃない?」

「いや、キットカットはネスレ……でもなぁ、チョコレートかぁ…」



の目に何故か涙がポロリと浮かび始めた――…理由はいたって簡単。

お菓子会社を言っている当の本人が、大のチョコレート嫌いなのだ。




「親父に無理やり食わされてよぉ……あん時は、三時間泣き通しだった…」

「そうだよね…おつかれ、サック」




ポンポンっと背中を叩くだが、その笑みは何処と無く楽しそうに見える。

涙まみれのを引き連れて、は"夕食の時間だから"と言って箒置き場へと降りていった。





……夕食の際、大広間前で待ち構えている女子生徒達の存在を考えもせずに…。














短かったね。でも、続かんかった……。 そろそろ、物語の核心へ。 27000hit、ありがとうございます。

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