突然、二人に呼び出しが掛かった。 指定された場所は……予想通り、校長室だった。 「あっ」 「おっ」 まるで誰かに仕組まれたかの様なタイミングで、校長室の像の前でとは出会った。 そんな出来事を「偶然だねー」の一言によって片付けられ、何時みても不恰好なガーゴイル像に二人は向き合った。 「俺、サックが合言葉知ってるって言われて聞かなかったんだけど…」 「おぅ!任せとけ、クリちゃんっ!え〜と」 は目を閉じ暫し考えた後に、比較的小さめな声で言った。 「森永とろ〜りクリームオンプリン!」 そう言い切ると、ガーゴイル像はひょこひょこと移動し、螺旋階段式エレベータが現れた。 とても校長が自ら考えたとは思えない合言葉の感想がの口からこぼれ落ちた。 「何でメーカー名が入ってるのかな……?」 そんなに、エレベータに乗る寸前だったはニッコリ笑って答えた。 「ん?いやぁ〜、オレが決めていいって言ったから――覚えにくいのにしたのさ!」 らしい答えに、軽くため息をもらしながら、は手招きする当人と共に校長室にむかった。 〜§〜 「いや、急に呼び出してすまんのぅ」 そう謝罪の言葉を述べながら、目の前の肘掛椅子に腰掛けている校長は優しい微笑みで言った。 しかし、は校長に出された煎茶に満足しているらしく、話を聞いていない程和んでしまっている始末だった。 「いえ、俺達の事は大丈夫です……それより話とは?」 流行る気持ちが言葉に出てしまっているだが、それは校長からの情報が今一番貴重だと思っているからだ。 「……実はのぅ。君達の帰るヒントが見つかったのじゃ」 「本当ですか!?」 綺麗なお茶菓子を食していたは何とか口の中を空にして驚きの声をあげるが…は質問を投げ掛けた。 「ヒント…ですか?」 「うむ。学校の禁じられた森にケンタウルスがおるのは知っておるかの? 彼らはあまり多くを語らぬのじゃが、君達について話したら是非会って話したいと言ってくれてのう」 校長はそう言うと、ダージリンティーが僅かに残っていたのを飲み干し、ティーポットから新たに紅茶を注いだ。 「えーっと、ダンブルドア先生には、そのケンタッキー…」 「……サック。ケンタッキーじゃなくて、ケンタウルス」 ナイス☆ボケを繰り出したに対し、ジャパニーズ突っ込みの身振りをしながら、は優しく訂正した。 「えっと、そのケンタウルスに、何故先生はオレ等の事を話したんですか?」 「ケンタウルスは、星見の力を持つ知的な生き物なのじゃ……。 ワシとて色々調べたのじゃが、結果的には彼らに相談することにしたのじゃよ」 校長が自分達の為に、表には見せていないものの、大変に苦労しているのに気付き、 二人は何とも言えない気持ちでいっぱいになった。 次の言葉が思いつかずにいるとに、校長が話を続ける。 「じゃが、まだ森に入るには雪が多すぎる……。 彼らから雪解けを待ってほしいと言われておるので、話はもう少し先になるじゃろう」 校長は残念そうに言うと、少し冷めた紅茶を啜って、大きくため息をついた。 〜§〜 「……校長の話、どう思った?クリちゃん」 校長室のガーゴイル像が元の位置に戻ったのを見届けた後、歩きだした二人は互いの意見交換をはじめる。 質問を投げ掛けてきたに、少しの間をあけた後、は答えた。 「……俺は、まだ帰れる方法が手に入れられるかわからないけど、可能性があるなら…行きたいな」 はそういい終わると、持っていた鞄の中から洋皮紙を取り出して、に言う。 「サックー、俺クィレル先生にレポート出さなくちゃいけないから、ここで!」 そう言って、今にも走りだそうとしているを見て、は思い出す。 ――…深夜の廊下での、あの……不気味な会話を。 「――クリちゃん!」 とっさに叫べばは驚き、瞬時にこちらを向いて立ち止まった。 しかし、呼び止めたもののは急に不安になった――聞き間違えだったかもしれない。 姿をしっかり見た訳でもない――そんな考えを巡らせた後、発言した。 「…あの先生には、何かあるから気を付けてくれ」 それ以上は何も言えず、は自分の寮に走り去って行き、はその場に取り残された。 ……の忠告の真意を見抜けないまま、は教務室に足を進める。 《何か……ある?》 自分の言葉が、訳もなくの頭の中で響き続けていた。
いやぁ、最高。ケンタッキーってw 次は(友人の助言により)オンリーですね。 31000Hit、ありがとうございます。