暖炉の炎がチラチラと燃え、その暖かさでは少しうとうとしていた。

クリスマスパーティーから数日経ち、自身も各教科から出されたレポートを片付けようか少し考えていると…。



「…ちょっといいかな?」


意識の霧の中に急にハッキリとした声が聞こえては急いで声のほうを振り返った。

そこには、とても思いつめた表情を浮かべるロンが立っている――どうしたのだろうか。



「…ん、あぁ。いいよ」


がそう言うと、ロンの表情が少し柔らかくなり、暖炉の近くにあるもう一つの肘掛け椅子に腰掛けた。

「えーっと…」と自分が言いたい事が纏まっていなかった様子のロンだが、少々の間の後言う。



「…ハリーの、事なんだけど」

「ハリー?ハリーがどうかしたのか?」


ロンの言葉を受け、軽く肘掛け椅子から身を乗り出して後ろを振り返ると、

そこには何だかぼんやりしている――白昼夢患者の様にも見えるが――ハリーが椅子に座ってため息をついている。


かなり深刻な内容だと確認したはロンの方に向き返って先程より数段階声を低くして事情を聞く。




「何かあったのか?……クリスマスぼけって言う風にも見えなくはないけど」

「違うよ!昨日、僕達夜寮から抜け出してある所に行って来たんだ」

「そりゃ、又スリリングな冒険をしできたもんだ…」


がそう言った後、ロンはハリーがあの状態になった経緯を話し始めた。

説明時に、ロンがハリーの様子を余りに気にし過ぎて声がには聞きづらく、説明し終わるのに少し時間が掛かった。


…クリスマスプレゼント……閲覧禁止の棚…そして不思議な鏡。




「――…鏡?」

「そうなんだ!僕とハリーが見るものが違う鏡なんて……どう思う?は」



ロンの問い掛けにはう〜んと暫しの間目を瞑って考える。


見る相手によって写るものが変わる……何かの暗示が見る瞬間にだけ働いて

それで色んなものを見せている可能性があるとは踏んだが――それだとしても、危ない事に変わりはない。




「確かに、そりゃヤバイね……行かない様に止めてくる」


そう決心したは、急いで肘掛け椅子から立ち上がりハリーの元へ向かおうとしたが、

それに気付いたロンが慌てて椅子から身を乗り出しての腕を引っ張った。



「駄目だよ!僕が何回言っても全く聞いてないんだ……他の方法を探さないと…」


ロンの言葉に彼の相当な苦労が見えたので、それを信じては再び肘掛け椅子にドカッと座り込んだ。




「…じゃあ、こうしよう。ロンはもしそこに行こうとしているハリーに気付いたらその場で精一杯説得してくれ。
  
 もし、それでも駄目だったら……オレが今晩ずっと談話室に居るから、出て行ったハリーを尾行する」


の言う作戦が、二人の間では一番良い案だった。


ハリーが行動を移すときこそ、意識が一番ハッキリする時だと予想できるし、

もしそれでもハリーを止められなかったとしても実際の現場でハリーを説得すれば、なお一層彼の行動を止められる可能性がある。


ロンはがどうやってハリーを備考するのか気になったが、それはあえて聞かず、夜になるのを待った。





〜§〜





パチパチと燃える音しかしない、深夜のグリフィンドール談話室にて……本日決めた計画通りがそこに居た。


しかし、彼の目は明らかに開いていない。いや、実の所夜更かしが得意ではないにとって

この計画はかなり無理のあるものだったのだ。


時々もぞもぞと動く物の、目が覚める気配は微塵もなかった――が。



カンッ…カンッ…カンッ……



夢の中に居たに、その足音は余りにもハッキリしすぎて思わず飛び起きて目をこすった。

螺旋階段を降りてくる足音に、は肘掛け椅子の影から相手が誰だか様子を伺った。



カンッ、カンッ



下る際に出る金属音がしなくなったが……そこには誰も居なかった。

――…どうやら、ロンが言っていた"透明マント"と言う物を既に羽織っている様だ。


足音は、の存在になど全く気にせずにスタスタと寮の出入り口から廊下へと出て行ってしまった。

も急いで肘掛け椅子から立ち上がり、談話室の出入り口からスタッと飛び降りた。



「あら!今日はちゃんと姿が見えるのね!」



太った貴婦人がとても眠たそうにそうに話しかけてきたが、今はハリーの行方のほうが気になっていた。

は、辺りに注意しながら足音だけを頼りにハリーの後を静かに追う。


静まり返っていて、少しの足音だけでも居場所がバレてしまいそうな夜なのに、ハリーはバンバン音を出して進んでいく。

……自分の身も心配だが、は正直"そんな無鉄砲なハリー"が心配になってしまった。


かなり廊下を歩いていたが、そろそろ付いても良い頃だと思い、ハリーとの距離を縮めると…。

案の定、ハリー(足音)は遥か前方にある扉を開いてその中に入っていった。

完全にハリーが中に入ったのを確認したは、すぐさま廊下の角から飛び出して後を追おうとした――しかし。



「…一体、奴等は何者なのでしょうか?」



突然、次の曲がり角の先から誰かの声がして、はすぐさまさっきまで居た曲がり角に戻って様子を伺う。


月明かりで見えるそのシルエットと声からして男だし、何時もと口調が違うものの――クィレル教授である事が分かった。

しかし、あんなにおどろおどろしい教授が、何故口調を変えてこんな所で独り言を言ってるのだろうか。




「…ワシとて分からぬ……ハッキリしておるのは奴等の魔力は想像上に高い事だ」

「……アンジョウとフジヤは、きっと自らの魔力になど気付いていないでしょうが…」



明らかにクィレル教授の若々しい声とは違い過ぎる声の後の発言に、はその場で固まった。


《…何でオレ等の名前が出てきてるんだ!?こんな怪しい会話に!》


内心はそう心の中で叫んだが、その会話はクィレル教授が去っていってしまった為、よく分からずに終わってしまった。

角からゆっくり出たは先程の会話に少し混乱しながら頭の中で整理する。


今のは、本当にクィレル教授一人しか立っていなかった。

なのに、声は明らかに二人分で……なんとも殺気めいた会話を繰り広げていた。

……もしかしたら、後ろに"何か"あるのかもしれない。


はそんな考えを頭でめぐらせながらハリーが入って行ったと思われるドアに近付いた…が。




「えっ、!?」



がドアにたどり着く前に、ドアが微かに開き、ハリーの驚愕の声が思わず廊下に響き渡った。

声がでかい――と注意するまもなく、ハリーの姿が一瞬マントの下から現れて。


「何やってるだい?早く中に入りなよ!見つかったら大変だよ!」


そう言って彼自身を心配して追ってきたに手招きした。

はその場で思わず盛大なため息をして、今はもうシッカリとした瞳をしているハリーのご好意に甘える事にした。



……あの気になる会話をもんもんと頭の片隅で考えながら。










長いし、しか出ていないと言うえこひいき。 でも次はオールにしようかな。 24000hit、ありがとうございます。

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