「クリちゃ〜ん!」



大広間に入ろうとしていた愁とドラコ達を見つけて、はピョーンとに飛びついた。

――それはさながら、蛙のように見えた。



「…重いよ、サック……」

「あ、悪ぃ悪ぃ!……クリちゃん。メリークリスマス!」



抱き付くのを止め、にそう言って微笑んだ。

……そう、今日はクリスマスなのだ。



「マルフォイ達も、メリークリスマス」

「お、お前なんかに言われたくないっ!」



が気を使い、の後ろにいるドラコ達にも挨拶をするが、ドラコはフンッと怒って大広間に入ってしまった。

そんな彼に首を傾げるを引っ張って、も大広間に足を踏み入れた。





…中は、本当にすばらしかった。

魔法の雪は白銀に輝き、雪の中浮かぶ蝋燭達はなんとも幻想的に見えた。

教師テーブルの横に聳えるクリスマスツリーも、とても豪快で圧倒されるものだった。



「うっわ〜!豪華すぎじゃない!?」

「…サック、感動するのはいいけど――"アレ"は忘れてないよね?」



いかにも怪しい"アレ"と言うキーワードでが訊くと、は親指をグッと立てて言った。



「おぅ、バッチリさっ!……じゃあ、クリちゃん。また後で!」



そう言って、先に席に着いていたハリー達がいるグリフィンドールテーブルへは走っていった。

そんな彼を見送ってから、もテコテコと歩いて自分の寮のテーブルに着いた。




「…何では、アイツと仲がいいんだ?」


まだご機嫌斜めドラコが、が席に着いた瞬間訊いてきた。

は、少し考えているような顔をしてから、ドラコに答えた。



「…俺とは、実の所会ってからまだ何年も経ってないよ。

 それでも仲がいいのは…"相棒"だからかな?俺もも、相手がいないとすごく弱くなっちゃうんだ」


「……今のは、アイツがいるから""なのか?」


「――…それに近いかな?」



そう言って、は目の前に現れたステーキに手を伸ばした。






〜§〜





「紳士淑女の諸君!…ここでビックイベントじゃ」


パーティーも一番の盛り上がりを見せ、発言者である当の校長も、頬をうっすら赤くしている。

みな、何なのだろうかと校長を見詰め、次の発言を待っている。


――…妙に何故かソワソワしているを除いて。



「今夜、君等もよぉく知っておる二人が演奏してくれることになっての。

 …ミスター・アンジョウ、ミスター・フジヤ。準備をお願いしよう」



急に自分の近くに居た友人が校長に呼ばれたので、ハリー達やドラコ達は驚いた。

一瞬、ビックリかとも思えたが、当の友人達の顔に緊張の色が見えたのでそれは無いとハッキリした。


スタッと立ち上がった二人の手には、しっかり演奏の為のギターケースが握られていた。

自分の寮のテーブルを離れ、先に合流した咲都達は小声で話す。



「…何か、緊張するね」

「そりゃそうさ、クリちゃん!オレ等の演奏活動始まって以来の大入りだぜ!?」



少し声を荒げてそんな事を言うだが――…かなり緊張しているようだ。


教師テーブルからも、そして各寮テーブルからも見える様に、

二人は右側の暖炉前の空きスペースで演奏の準備を始める。


後ろからの暖炉の熱が少しきついが……今は緊張の所為か余り気にしていない。

…と言うより、むしろ準備最中だと言うのにもかかわらず、ずっと大勢の視線を浴びている方がきつい様だ。



「え〜、ミュージシャンとしてはこんにちは〜。・安城で〜す!」


演奏の準備を先に終え、余裕を持てたが先に観客である全員に挨拶をする。



「オレ等は"アコースティックギター"と言う種類のギターを使っている二人組みのミュージシャンです!」

「…今日は校長先生のお誘いの下、此処で演奏させてもらうことになりました」



…今まで見た事のない二人の姿に、観客は呆然気味だ。

いや、無理も無いだろう。が練習をしているのを見たことがあるのは、他ならぬ校長だけだったからだ。

と同じく、準備が完了したも軽く観客に挨拶し、演奏体制に入る。



「それでは、演奏してもらおうかのう……拍手を!」


校長の指示により、何となくぎこちない拍手が大広間に響き渡る。

だが、その中でも二人とかなり友人関係が親しい仲である者達の拍手は大きかった。

拍手を受け、二人は何時ものアイコンタクトをしてから――が言う。



「歌います…"It reaches the sky"」









弾く弦からは、新鮮な音色が響きあふれた。


今まで聞いた事の無い楽器の音色に……体が震える。


クリスマスの雰囲気には全然あっていなかったが――


それすら、許してしまう様な歌だった…。







最後のフレーズを終え、演奏を止めると大広間は静寂で包まれた。

…この間が、の一番キツイ時間だ。



――…少しの間が空いた後、急に盛大な拍手が観客から沸き起こった。



自分達の歌に自身はあったものの、こう素敵なリアクションをされると唖然としてしまう二人。

しかし、徐々に大きくなる拍手に、思わずの顔は笑顔になった。




……遠くから演奏し終わった二人を見て、ドラコは思っていた。


愁が言うとおり、安城は自身に無くてはならない存在なのだと。

そして、二人が一緒であるから――あんな歌を生み出せるのだと。


力なく拍手を送り終わると、ドラコは微笑みを浮かべながら近くの暖炉の火をぼんやりと見詰めた。

















微妙な終わり方。再び。 キャラ構成が甘いのかもしれないと思う今日この頃。 ……ギャグは私のジャンルじゃないのかもしれないなぁ…。 23000Hit、ありがとうございます。

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