"Two. hope"













事が収まったかのように見えたその場で。

ここに傍観者が、二人。










勢いよく部屋を出て行ったハリーの足音が完全に聞こえなくなると、

この部屋の主であるダンブルドアは静かに息を吐き、ドアからテーブルに視線を移した。


まだ赤がまばらに残る刃とは別に、"柄"に嵌められているルビーは炎のように輝いていた。





「話をしたいのじゃが、よろしいかの?」





軽い口調で、ダンブルドアは誰かに話しかけるように言った。

しかし他にいるのは、先刻ハリーに連れられて、そして未だ眠り続ける女子学生一人だけ。



ハリーによれば秘密の部屋に倒れていた彼女――が目覚める気配は無い。



しかし。






「――…何故、分かった」






背後から突如声を掛けられたにもかかわらず、ダンブルドアは大して驚きもせずそちらを向く。

そこには、漆黒をまとい、定まらない瞳を持つ男が静かに立っていた。






「まぁ、あれじゃな。ワシの所には、色々な知らせが舞い込んでくるからのう?


「選別の帽子に、星見からか…」






独り言のように、虹の眼の男は呟いた。





「いやいや、それは彼女に関しての物じゃが、君ら(・・)の事については一年前から知っておったよ」





ダンブルドアはソファーに移動し、「座らんかね?」と男に言った。


少しの間の後、彼は静かに移動し、が眠っているソファーの空いたスペースに腰掛けた。

そして、首を動かし、眠る彼女を見る。




青い。


全身、白を通り越して青かった。その青に、血の赤が滲んでいる。

痛々しい、しかしの寝息は穏やかだった。






「…全て、分かっていたのか」


「あくまで断片的じゃがの。ただ一人の人間が起こしたとは思えんかったよ」






彼が視線を前に向ければ、ダンブルドアは何時からあったか分からない紅茶を啜っていた。

……ひとときの沈黙の後、呟くように、ダンブルドアは言った。






「君が心配せんでも、彼女の手伝いをワシはするつもりじゃよ」


「…それは、己に切なる望みがあるからか」


「ワシじゃて、望みのひとつやふたつはもっとるよ。叶うか、叶わないかは抜きにしてじゃがの」






どこか疲れた顔で、老いた校長はため息をついた。

しかしその表情を少し変えて、ダンブルドアは眠るを見る。






「……は」





眼が紫になったのと同時に、男は口火を切った。





「深い、闇にいる。内側からは見えず、外側からは微かに見える闇の内に」





直接、彼がの事情を説明する事は無い。

しかし、男は言葉のあやで何かを伝えようとする。

……それは、傍観者なりの何かなのか。





「手を差し込めば肉は裂け、その血はに降りかかるだろう……だが」





男の目が、黒になる。







「助けてほしい」







その発言とともに、男の姿は薄らいでいき…最後には消えた。

何事も無かったかのような、静寂がその場に戻ってくる。








静寂の中、ひとつの寝息が微かに聞こえた。










暗いね。ごめんね。意味不明だね。

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