"Sinking mind."



















白の世界を抜け出せば、そこは再び闇の空間が待っていた。



いや――違う。ここは、魔法が施された窓から月光が零れる私の部屋だ。

決して、秘密の部屋ではない…。





「……ッ…」





…無性に目頭が熱くなって、私の目から涙が零れ落ちた。


怖かった――帰ってこれないんじゃないかとも思った。

私は、彼が居るあの空間から、もう抜け出せないと……恐ろしい、見えぬ恐怖に駆られていた。


涙は留まる所を知らない。



これは、安堵の涙なのか、孤独を嘆く涙なのか。


泣いている自分が分からなくなっていた。








――…。







「!」




私は頭の中に響いた声を、今一番聞きたくなかった。


その、冷たくて、無感情で、何時もと変わらぬ声が。





「う、うるさいっ!何も言わないで!

…私の苦しみなんか知らないくせに。私の悲しみなんて、分からないくせに!」





心には、怒りしかなかった。



今、一番居て欲しくない存在が――あろう事か、自分の中にいるなんて。


その感覚が、言いようの無い程、もどかしくて、腹が立って。










「私は――私は、貴方達の為に生きてるんじゃないの!」









叫ぶようにして本心を言えば、心は更に当ても無く沈み込んだ。


何で…私は……。






「放って置いて…」





そう言うと、私は座り込む体形を崩して、床に倒れこんだ。


火照る私の体から、冷えた床が心地よく熱を奪う。


天井を見詰めているはずなのに、私の頭はその光景を理解していない。


目はハッキリ開いているのに、心は此処に無い様な――そんな感覚に襲われた。






涙を流せば止め処なく、


声を上げれば嘆き、


心を閉じれば身を滅ぼす。





「…もう……」





涙で揺れる視界の中で、私はそう呟いた。







崩壊にまっしぐら…でも、必ず立ち直ります。彼女なら。
何故なら、さんには"自殺"は絶対しないと言う決意があるからです。
その決意の元は、今後出てくると思います。

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