"It is sure to understand."
〜§〜 雪が積っているが、それとは裏腹に空には雲一つない晴れ間が広がっていた……その日差しの暖かさを、 顔の皮膚で感じ取って廊下を歩いている私に、近付いてきた中庭から誰かの声が聞こえた。 「…ドラコは、やらないのか?」 「だから、やらないと言ってるだろう!…本当に、幼稚な奴等だ」 廊下の曲がり角からひょっこり向こう側を覗けば――。 そこには、雪遊びに夢中になる二人と、それを飽きれながら見詰めるドラコの姿があった。二人は、身長や 図体の割にはまだまだ子供っぽい一面をチラつかせているが、ドラコはあまり"子供らしさ"を見せたことがなかった。 彼等を見て一瞬思い出す――いつか、バレるのだ――しかし、私の体は心と反対の行動を取ってしまう。 「ドラコーっ、ビンセントー、グレゴリー!」 大きく手を振りながら、冷たいの床から銀世界へと足を踏み出す私…なんで、こんな事が出来るんだろう。 突然現れた私に三人は驚くが、何故か言葉が止め処なくあふれてくる。 「ごめんなさいっ、昨日遅くまで本を読んでいた所為でこんな時間まで寝てしまっていて… あ、あとプレゼントありがとう!どれも素敵なプレゼントでした!」 言っている事は多少の嘘が混じっているが…私の笑顔は何故か自然と浮かんだ。 ベンチに積っている雪をどけて、杖で防水呪文をかけた後に私はそこにゆっくり腰掛けた。 私のキビキビさに驚き続けていた三人だが、雪遊びをしていた二人はぎこちなく雪だるま作りを再開した。 ハァーッと、大きく息を吐き出してから一気に吸うと自分を作っている小さな存在が落ち着く気がした。 「…」 「ん?…なんですか?」 私が座っているベンチの近くまで来たドラコが、急に真剣な表情と声で私に話しかけてきた。 それでも、私の笑顔は何故か崩れたりしない。 「――…、泣いたんじゃないか?」 …でも、その笑顔は簡単に崩れた。 急に表情が変化するのを見られたくなくて、私はとっさに俯いて彼の発言を待つ。 「なぁ、。僕だって、君の事何も知らないわけじゃない。 仕草とか、癖、話し方に顔色……は、僕が何も知らないと思ってるだろう?」 グサリと、心の隅で聞くからに痛そうな音が響き渡った気がした……顔が、上げられない。 「僕は、何時までもとの距離が縮まない気がして…少し怖いんだ。 一瞬近付いたと思えば――そこで君が見えない程の大きな壁が立ちはだかるんだ」 降り積もった雪の上をゆっくり移動しながら、ドラコは話を続ける。 …ドラコは、気づいていたんだ。私との間の"具現"の壁に。 ――…その正体を知らないだけで。 「でも…僕は、中々近づけない事で――を責めたりしない」 急に柔らかくなったドラコの口調に、思わず私は顔を上げて彼を見詰めた。 そこには、確かに切なそうなのだが…どこか優しさも感じられそうな表情を浮かべている彼がいた。 「相手を知るのに一生懸命になって、その相手を傷つける事は――絶対やっちゃだめなんだ。 それなら……僕は、の前にある壁が薄くなるまで待つさ」 逆光で目を瞬かせている私でも――彼が今まで見た事のない優しい笑みを浮かべていたのを目撃した。 私がじっと見詰めていると、急に思いついた様に彼は近付いてきて、腕を引っ張った。 「おーぃ、二人とも!雪合戦するぞ!」 「え、あ!ド、ドラコ!?」 さっきまで雪遊びになど関心を示さなかった彼に、 ビンセントーとグレゴリーは驚きの表情を浮かべていた。 彼は少し強引で、掴まれている手首が痛むけど――その痛みが、今一番嬉しかった。 宣言:ドラコ夢には絶対走りません。 謝罪:聖夜といっておきながら、夜になりませんでした。 多分、ドラコには"具現の力"は極限まで薄くなってしまったんだと思います。 |