"Christmas eve"
〜§〜 クリスマスが――やって来た。 朝、冷え込んだその日……私は目を開けた瞬間に思い出した事で、身が沈む思いだった。 ――…私は、クリスマスの日にこの世界に来たのだ。 望んでなど、いなかったのに。 家族へのプレゼントを机の下に隠したままだ。食べ物ではないから、大丈夫だろうけど。 高かったんだよねぇ、姉ちゃんへのマニキュア……今、どうしてるかな? 天井を見詰める目に、微かだが熱がこもり始める。それを腕で払いのけた。 …なんでよ。何で今日はこんなに涙腺が緩いんだろう。 そう思いながら、私は体を起こしてベッドから降りようとしたが……足に妙な感覚が走った。 驚いて、急いで足を引っ込めてからそこを見ると…綺麗に包装されたプレゼントが三つ置いてあった。 三つ…三人……その言葉でピンと来た私は、比較的小さめの包みを手にしてゆっくりと開いた。 手の平にポンと出てきたそれに、心の底から驚きながら添えられたカードを読む。 「メリークリスマス 君に常なる幸運を ドラコ」 ドラコから送られてきたプレゼントであるマフラーを見詰めながら、カードをそっとベッドの上に置く。 微かに震える手で残りの二つの包み紙を急いで開けると、 中には綺麗な羽ペンと珍しいマグル学の本が入っていた。 ……なんて言ったら良いのか。わからないや。 「…うッ…な、何で、そんなにっ!……」 ――…私なんかに優しくするの。 「……う…うわぁぁぁ……っ!」 堪えていた涙が、ツゥーっと頬に線を描いて、顎の先から雫を作って落ちて行く。 絶えられない感情に、大声を出して悶え苦しむ。 息が荒くなる…なんで、こんなに嬉しいのに――悲しいのだろう。 私は、感情の波に流されながら彼等の暖かさへの感謝と、いつか彼等と離れる事になる悲しみに暮れて 泣いた…泣き続けた……談話室で私を待っているかもしれない彼等の事など全く気にせず。 全身全霊を、大粒の涙に変えて…。 泣く事のなかったが、涙を落としました。 を苦しめるのは、三つ。 本達が与える"未来を変える代償"。自分が抱く"先が見えない不安"。 そして……人から受ける"暖かさを感じる心(そして、その後の罪悪感)" 暗いね。ハッピー(幸せ)クリスマスなのに。 |