"Encounter is former"














週末に入る金曜日の放課後に……ドラコがお見舞い兼勉強を教えにきてくれた。

本人の話では"何時も会いに行こうとすると私は寝ていたので会えなかった"と言う理由で入院3日目での

お見舞いらしい。



「具合の方は、どうなんだ?あまり顔色が良くないぞ」

「……えぇ、でもだいぶ良くなりました!ありがとう、ドラコ」



そう言って、私は丁寧な言葉でドラコに言いながら微笑んだ。


…でも、実の所。私の体調はあまり良好とは言えない。ベッドに居るだけで動かないのに睡魔に襲われ、

理由もなく顔は青白いし、気分もすぐれない――代償の余波にしては、明らかに変な気がしてならない。




の退院は……やっぱり週明けなのか?」

「そうなりそうです……ごめんなさい。ドラコの初試合、見に行けなくて……」

「いや、無理はしない方がいい。次があるさ」



そう言いながらも、顔は明らかに残念そうな表情を浮かべるドラコ。


……勿論、初試合とはブラッシャー暴走事件が起きるクィディッチの初戦の事だ。実物など今後はしばらく

(襲撃事件によって)見れないので是非観戦したかった。



そして帰りの際…自分の教科書を鞄にしまっていると、ドラコの手が急に止まり、その行動を見つめていた

私に向き直る。その目は余りにも真剣で、それでいて困惑の色をちらつかせていた――ドラコは私に言う。



「…僕には分からないが、がとても苦しんでいる様な気がしてならない――話したい時、言ってほしい」



そう言い切ると、鞄を荒っぽく掴んで保健室から足早に出ていってしまった。

一人、ぽつんと置いていかれた様な切なさが、心に溢れた。

…確かに、さっきのドラコの言葉は動揺したけど、嬉しくて――そして、後ろめたかった。


"人に迷惑をかける"……それは、人としてどうしても避けられないのは分かってる。分かってるけど、私は

此処に居るか居ないか選ぶ事が出来た。それなのに、私は後先考えずに彼と友人になってしまった。


彼は私に近付こうとしてくれるのに――…私は、私は突き放すしかない。

弱い自分が、いつ“ボロ”を出すか分からなくて…恐いのだ。



サイドテーブルに広がったノートを整理しながら、私は深いため息をついて、雲一つない夕空を見つめた。







〜§〜









物音一つしない筈の夜の保健室で、誰かの呻き声が微かに響いていた――腕を骨抜きにされたハリーだ。


今日の試合は、筋書き通りの事がしっかり起きたらしい。そして、さすがのドラコもハリーがいる所為か試合

の結果報告にはこなかった…そして、当の本人はカーテンで仕切られた窓側のベッドで激痛と戦いながら

眠りについているみたいだ。


マダムのご好意によって、ハリーや他のグリフィンドール生には寝ている生徒が私だとは知られずにいるが

――他に寝ている人がいると、なんとなく寝づらい。


スゥーっと、物音を立てないようにベッドから抜け出し、私は人気が一切ない廊下に出た。




静まり返っている廊下を歩いて、私は近くのトイレへ向かう。

保健室の中には勿論トイレがあるのだが、ピープズの悪戯によってトイレが数日前に故障し、歩いて別の所

までいかなければならないのだ。



「冷える様になったなぁ……」



とにかく外気温が昼と夜だと天と地の差が生まれるこの地域の気候には、まだ慣れていない。

自分の育ちの地がどれ程過ごしやすかったか、今更ながら軽く手を合わせて見えぬ存在に感謝した。


用事も済ませ、トイレから出ようとした――その時だった。








――…ドアの向こう側から、音が響いてきた。




中途半端、お許しを。
飛ばし過ぎ…ではないよね?うん。
山場が次に延びてしまった……今回は前半で、後半はもう少しお待ちください〜。


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