"Advancement ..him it.."
「……メアリィ?」
「…ハイ」
「……あんなに誰にも"私が歌える"って事言わないでって言ってたよね?」
「…うん」
「…――でも、ニコラスが知ってたのは何でかな?」
「…………、許して…」
単発的な会話を繰り広げ、私はメアリーに極度の恐怖を与えてきた。
…勿論、色んな制裁はくわえて来たよ?そうしないと腹の虫が収まらなかったからね…。
「……にしてもなぁ…」
メアリーのトイレから、かなり離れた場所まで来て、私は体の至る所を摩りながら廊下を歩いていた。
"代償"の"筋肉疲労"がとても今日は身に堪えてしまう……しかし、そんな私の辺りには、本日の授業が
終了して間もない為か、行き交いしている生徒の合間を縫って進んでいく私の脳内には、一つしかない。
――…行くとは決めたが、どうやって行こうかと言う事だ。
ニコラスに条件を付けるとか…大広間に一瞬姿を現してから行くとか(アリバイ工作)…色んな事を考えては
いるものの、中々こう"ピンッ"とした閃きが無くて…非常に困ってる。もし、こんな時…三波だったらなぁ。
「後の事気にしないで逝ってきまっせ!」
とか言って一直線なんだろうけど…そんな事私がやったら即お陀仏だな……。
「ミス・!」
…――やばい。来た。
背後から声を掛けられゆっくり振り返ると、この前以上に満面の笑みを浮かべいるニコラスが浮いていた。
その笑顔が、今はとっても恐ろしいです。
「……ニコラス。ちょっといいかしら?」
手は掴めないので、手荒な事が出来ないのが心の底から残念だが、なんとか彼を引き連れて人気の無い
廊下まで移動した。ああ言う場所で、スリザリンの生徒がグリフィンドールのゴーストと話していると、何かと
後で都合が悪い。その事を注意しようと思ったが、もう彼の瞳には私の"回答"の事しか映ってないようで、
私は言うのをやめた。
――…仕方ない。一番危険性の低い物で行くか。
「絶命日パーティーの事ですけど……歌ってもいいですよ」
その答えで、ニコラスの笑顔がより一層輝いたのは言うまでもないが……。
「ですが――条件があります」
「な、何でしょうか?」
緊張で、血がざわめくのが分かるが、此処で強気で行かないと後悔してしまう。
私は、深く息を吐き出してからニコラスに言った。
「…私は、あまり目立つ事が好きじゃないんです。
それに、今年初めてホグワーツのハロウィンを迎えるので、やはり一度は大広間を覗いてみたいのです」
「…と、言うと?」
少し勿体ぶった私の言い方に、ニコラスは不安を感じている様で、微かに幽体が左右に小刻みに揺れた。
「……歌うのは一曲だけ。出来るなら貴方のパーティーの最初の方に歌わせて欲しいんです。
その時、私は"私"だと分からない姿で歌わせて頂きたいのです――それでもいいですか?」
「えぇ、いいですよ!歌って頂けるだけでいいのですから!」
私が断るのではないかと心配していたニコラスはとても嬉しそうに私の条件を飲み、続けた。
「…では、パーティーが始まるのが夕食と同じ七時なので、七時半〜八時の間でどうでしょうか?」
七時半〜八時の間……一番それが妥当だろう。最初の方過ぎると、パーティーの空気に溶け込めずに
苦労する可能性もある。私は少し考え、ニコラスに微笑んで答えた。
「じゃあ、それでお願いします。勿論、紹介する時に私の名前は伏せてくださいね?」
「大丈夫です!……ちなみにどんな曲をミス・は歌えるのですか?」
…凄く今の私には手厳しい質問に、思わず体が一瞬フリーズする。
私が歌える曲といったら、大半が日本語の曲だし、それもかなりマイナーな物の方が多い。
――…歌うか?マ○アヒ。
「…ミス・?」
「あ、いえ。すみません少し考え事を…外国の歌が多いですね。母が教えてくれた曲ばかりで…」
「外国曲が歌えるのですか!…ならば外国の客人も来られるので、是非ともお願いします!」
押しが強いニコラスの姿勢に、私は頷いてそれを承認し会話の終了を宣言する。
「……それでは、当日楽しみにしています」
「こちらこそ、よろしくお願いします。では!」
ニコラスは、足があったらスキップして行きそうな雰囲気を振りまきながら大広間の方へ去って行った。
一人残された私は頭の中で色んな事を整理する。
ああ頼まれたものの、私は日本の曲を歌うのに気が引けていた…此処は別世界でありながら、基本的な
出来事は変わらず起きる世界なのだ。私が過ごす1991年の今とて、日本ではその時代の歴史が地に
刻まれて行く事になっている。もし、私がパーティーで未来の曲を歌ってしまえば、未来の歌手に迷惑を
かける可能性が無いとは言い切れない――何てややこしい環境に置かれてるんだ。私は……。
「おや、じゃないか」
突然話しかけられ、一瞬動揺したがすぐさま発言者がいる後ろを振り返る。
そこには両サイドに長身のグラップとゴイルを従えたドラコが立っていた。
……あの一件から、少し距離を置いていたから話し掛けられるとは思っていなかったのだ。
「どうしたんだ、上の空だったぞ」
「…大丈夫です。最近勉強が忙しくなって来た、と思ってたんですよ」
「確かに、各教科のレポートの量が急に増え始めた気もするが……あと、」
唐突に従えていた二人に"Wait(待て)"を指示すると、
彼は私の腕を掴んでぐぃぐぃと人気の無い廊下へと引っ張っていく。
「えっ、ちょっと。ドラコ!」
動揺する私を無視して最後まで引き摺ると、ドラコは私の腕を開放して私の目の前に立つ。
私を引き摺った所為か、顔が赤い気がする……いや、それにしては赤すぎる気もする。
「……この前は、悪かった」
「えっ」
言いずらそうにドラコの口から出てきたのは謝罪の言葉だった。
少し驚いている私に対して、話を続けるドラコ。
「の言う通りだった……僕が言っていい事と悪い事がある。悪かった」
「…私の方こそ、叩いてごめんなさい」
何とも表現しずらい空気が私達を包む…その謝罪の言葉を、傷つけた本人に言って欲しかったけど――…
それは私の高望みだと思った。ドラコにとって、"純血主義"の世界に沈んでいた思考を変え、人に謝るまで
出来る様になったのだ。ハーマイオニーには悪いけど、今回は"変われたドラコ"を確認出来ただけで大きな
進歩だと思って欲しい。
「…行こう。二人が待ってる」
「はい!」
私達は頬の紅潮を何とか直そうとやっきになりながら、廊下の真ん中に置いて来た二人を迎えに行った。
何故か夢小説に出会ってからドラコ君の株が急上昇してます(殆ど、闇陣営の株価は上昇傾向です)
――さて、いよいよ次回はハロウィン。
back top next
|