"Event of staying up.....
all night dawning"


















授業初日の朝――。

魔法が掛かっている窓から輝く木漏れ日が溢れ、私は沈んでいた体を伸ばしながら寝たぼけている…。


何ていうのは、頭が良くて、人生的に結構余裕がある人間に限ってだと、私は思っている。



「あぁ……ラジオ体操の時間になっちまった…」


私は、何処の景色を写しているかも分からない窓から射し込み始めた日光を見詰めながら言った。目が痛

いし…体だるい…いや、普通オールナイトすればそんな状況になるだろう。まぁ、その理由は至って簡単。


一年生の勉強分を、私は抜かしていて、その部分が今日の授業で出てきたら困るからだ。





公式を立てるなら 恐怖(勉強不足)×焦り(今サボったら溜まる一方)=オールナイト


となった訳だ。



勿論、一年生の分の教科書すら持っていない私は、歓迎会の後直ぐ図書室に駆け込んで一年生の勉強

すべき範囲の本を大量に借り、部屋に篭って一睡もせずに今に至る。



「あったぁ〜らしぃ朝がキタッ!希望ぅのあっさぁ〜だ!!」


……歌っておきながら言いますが、私には今現在"希望"と言う物の欠片も存在しておりません。

しかし、ウジウジしていても仕方が無いので、再びベッドの上に倒れて体を伸ばす。


寝そうだ……いや、寝ると言う以前にそろそろ体が逆に冴えてきた。よくあるオールナイト後の症状だ。

後で体に来るだろうなぁと思いながら、私は洗面所へと姿を消した。






〜§〜






自分の顔から血の気が引いた気がした。

理由は簡単で、自分で聞いても納得出来る物だと思った。



…朝 っ ぱ ら か ら 脂 っ こ い ん で す け ど?



泣きたい……私の朝食は何時も決まって白米に豆腐の味噌汁に、卵焼きなので、

朝っぱら肉を食えるみなさんが分かりません。



「どうしたんだ?顔色が悪いじゃないか」


私がフリーズ状態だったのが長かったらしく、何時の間にかドラコ君が席に着いている最中だった。


「そうかしら…ありがとう。マフルォイさん」



ニッコリと少し疲れた笑顔でそう返すと、トーストに手を伸ばして齧り付く。


あぁ……トースターで焼いて食べたヤマザ○パンが懐かしく感じる。

あの中がほんわかで外がカリッとしたのが堪らなく美味しかった…。



「そう言えば、何故は今年二年生として編入してきたんだ?」


私が話題に全然積極性がないのに気づき、ドラコ君は話題を変えた。少し考えてから答える。



「私、数年前から原因不明の病気に掛かってしまって…それが春に治ったから今年編入が出来たんです」


「なるほど……あと、と呼んでいいか?」

「いいですよ。じゃあ、ドラコって呼ばせてもらいますね」



私は、トーストをごっくんと飲み込み、かぼちゃジュースで口を整えると、席を立つ。

そんな私を見て、再び驚いたドラコは、私に早口で訊いて来た。



「もういいのか?もっと食べないと体調崩すだろ。ふくろう達だって、まだ来てないのに」


「いえ、私は元から少食なんです。だから、昨日の料理がまだお腹に残ってるみたいなんで、平気です。

  ふくろうも、きっと来ませんよ」



今度は、相手を不安がらせない様に結構自然で元気そうな笑顔を見せながら言い、大広間の入り口へと

足早に進んでいった……ちゃんと出入り口について、ドラコから姿が見えなくなる所にきてから、私は

大きな溜息を漏らした。


こっちは演技をして相手を遠ざけようとしているんだけど、それはドラコには逆効果みたいで、一方的に

話を進めて来てしまう。出来るなら、空気みたいな人間になってればいいんだけど……それはそれで怪し

まれるから厳しいだろうなぁ…。


再び、大きな溜息をついた――その時だった。




「あ、いたいた……ねぇ!」



俯き加減の私の視界の端に、人影が見えたので、其方の方を見てみた。

其処には、グリフィンドールカラーのネクタイをした私と(姿が)同年代の少年が走って此方に向かって

来るのが見えた……明らかに、あの呼びかけ声は私に向けてなんだろう。



「えっと、おはよう!…あの、もしかして君って一年前位にロンドン付近の路上で歌ってたよね?」


・・・・・・・・・・・





ドッキーーーーン!!
…やばい展開だな。こりゃ。



「な、何の事?」


「あれ?人違いかな?でも君にそっくりだったから。

  ……あ、名前言ってなかったね!僕はディーン・トーマスだよ」


ディーン君か――そう言えば、確かに彼はマグル出身だし、ロンドンともなるとやっぱり休日とか旅行の

関係で行く場合が多いんだろう…でも、この場でその事を肯定すればいざと言う時矛盾が出来てしまう。


出来るなら、それは避けたい。




「そう、私は。でも、貴方が知ってる大道芸人ではないと思います」



それでは、と言って私は大広間を後にして、スタスタと図書室へと向かった。

残されたディーン君は唖然としているみたいだったが、それは余り気にしない事にした。





〜§〜





「では、みなさん。今日、初めは一年生の復習をしましょう!」


異様にテンションが高いフリットウィック先生の声で、私は現実になんとか戻ってこれた。


眠い……図書館に行ってからと言う物の、眠気が一気に襲い掛かってきている気分だ。

教室の一番後ろの席で、私は再び先生の姿を凝視する。



「浮遊呪文をやってみましょう。机の上に羽根はありますね?――では、始め!」


先生の一言で、クラス中がガヤガヤとやかましくなった。私は横目で前の方にいるドラコ達を見る。


ドラコは流石に主要キャラとして(?)立派に浮遊呪文を成功させ、杖で自在に羽根を操っていたが、

それに比べて巨人的な二人は、羽根は浮いてはいるが、クラッブは卓上から数ミリしか浮いておらず、

ゴイルと言えば妙に安定性がない浮き方をしていた。


私は机に置いといた杖を握り締めて羽根に先端を向ける。しかし、呪文を唱える気にはなれない。




未だに不安を持っている――もし、今の状態で魔法が使えなかったら…。

――嫌な気持ちだけど、今は拭える気がしない。


杖を使っての呪文を少しでも部屋でやっておけばよかったと、今になって後悔した。




「どうしました?ミス・。呪文を唱えていないように見えますが?」


何時の間にか、先生が横に来て私にそう話し掛けて来た――余計な事気付きやがった…。



「ほら、やってごらんなさい!」


キーキー声で促されて、私は大きく息を吸って杖先に全神経を集中させる――えぇい、成る様になれっ!



「Wingardium Leviosa!」



叫ぶ様に言った呪文の効果を、私は直ぐには見る気に成れず、唱える瞬間に目を瞑ってしまっていた。

しかし、何故か先生の声どころか周りにいた筈の生徒の声が一切聞えない――私は恐る恐る目を開いた。











目の前には、何故か何も無かった――いや、遥か前方に日光が差し込む窓達はあるのだが……。

それ以外、私の視界の範囲では余りにも多くの物が消え失せていた。


汚れが目立つ床を見ると、何故か所々影が見える。そして、その影はロースピードで動いている。

嫌な予感の二回目が、私を襲い、すぐさま上を見た。




「ミス・!一体どう言う事ですか!?」



私の見る範囲で言うのなら、先生含む生徒全員と共に、何故か椅子から本棚、そして机までもが全て少し

高めの教室の天井ギリギリの所まで浮いてしまっていたが、そんな中、驚きから漸く開放された先生が、

私に金切り声で叫ぶ。



「すみませんっ!! Finito Incantatem…Calm!


叫ぶようにして呪文解除を唱えると、机や椅子。そして浮いていた全ての人間が元の場所に着地した。

先生に対し、私は必死の言い訳を始めた。



「あのっ、時々こう言う事があるんです!この杖、実は母の形見で、自分に合ってるのか分からないの

 ですが、どうしても使いたくて!それで、杖と波長が合わなくて時々こうなるんです…っ」


結構うまい言い訳だと思った。私の(偽)両親は他界って事になってるし、若干役者も入れたから先生は

なんとか納得するだろう…そしたら案の定、先生は「それならいいでしょう」と言って、他の生徒の所へ

ヒョコヒョコと歩いて行ってしまった。


……まさか、こんな事になるとは夢にも思わなかった。

一般的な生徒としてこの学校に紛れ込もうとしていた私にとって、此れはかなりの痛手だ。




《……ねぇ。何であんな事起きたの?》



頭の中でそう、居るか居ないかも分からない本達へ質問してみるが、返事は返ってこない。

多分、何時も通り声を出して話した方が言いのだろうと思い。授業終了後の休み時間まで待つ事にした。










「ミス・!お待ちなさい!」



そして授業終了、私は足早に教室を出て行こうとしたが、案の定先生に呼び止められる。

あぁ……早く本達に理由を聞きたいってのに…このミニマムティーチャーが。




「何ですか?先生」

「貴方が、ワタシ達の呪文を解いた時に何か最後に言いませんでしたか?クラン…いや、クレェン…」


「"クレェム"です。みんなが宙に浮いている最中に呪文を終えたら其の侭落下してしまうと思って、

 穏やかに終わる様にしたんです。"Lumos"の後に"Maxima"を付ければ光が強くなりますよね?

 私はその応用を他の呪文で使えないかと思っただけなんですが」



完全なるハリポタ映画ネタ(三巻)を出してしまった私だけど、

あの時は完全に焦っていたから、こう言う言い訳で何とかならないだろうかと心の中で願ってみる。



「すみません、先生。私、少し急ぎますので…」


大体の説明を終えると、私は教室から風の様に走り去っていった。











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編集 5/11
さん、初日から徹夜ですか;
そして、ハリポタファンの筈なのに吼えメール事件を見てませんね…
その上初っ端から大事件起こしてますね

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