考え事をするのに、夏は一番不向きだと、今更ながら知りました。










悪夢はスタートライン23








汗で張り付く服と、自分の体温で生ぬるくなったフローリングで、ベターっと私は伸びてる。

遠くから煩くセミが鳴く声が聞こえるけど…今はそんなのどうでもよかった。


リドルから、多くの真実を聞いて、早数日。

強制的に会話終了になったけど…自分から彼に接触をする気にはどうしてもなれずにいる。




「そもそも、これって現実?」




勿論、この暑さと窓から差し込む日差しの眩しさが夢だとはとても思えないけど…。

私が言いたいのは…つまり、彼が本物の"トム・M・リドル"であるかって言うこと。


実際のところ、容姿と口調は同じだとしても、彼が彼である証明は何処にもない。

ただ、リドル…いや、トミー・リーゼルは異端者で、

現代を操ることが可能な人物と言うことぐらい。

でもそうだとしたら、態々私にそこまでして悪質なドッキリを仕掛けるか?


――やりうるかも(っ落ち着け、私!!)





「じゃあ、やっぱりキーパーソンは…""か。」





ハリポタと言う非現実と、現実に生きる私を繋ぐのは、他でもない私の友人の…らしい。

確かに、の消息が全く掴めずにいるもの、そう考えればすごくプラス思考だ。

だけど、もしそうだとしたらは…どうしてるんだろ。




「ーーーーっあぁ!もうやめだっ!!」




熱で頭の能力が落ちてきて、正常に理解も処理も出来なくなってきて、私はとりあえず体を起こす。

そして、少しずれていた扇風機をガキガキッとこっちに向けて風を浴びながら、思う。


うじうじしてても、多分真実は変わってくれない。

そして多分そんな私に出動要請が来れば、間違いなく彼に引っ張られて

あっちの世界に連れて行かれることになる。

…何も判断基準を作らなくて、行き当たりばったりなんて、そんなの嫌だ!





「情報収集に…行くかな!」




情報が手に入りそうな所に目星をつけておいた私は、そのまま軽く身支度をして、外に出る。

灼熱の太陽が、年々有害さを増す紫外線が、私を迎える。

…喧嘩を売られてるような気分がして、私は猛スピードで目的地に走り出した。




《素直にその時を待つほど…私は往生際はよくないんだよっ!…》



自分が火の玉になったような熱さを覚えながら、自分自身に、私はそう言った。







〜§〜
カランッと、涼しげな音が響き、店の中に入った私をエアコンの冷気が包み込む。 余りの気温の差に思わず鳥肌が立ち、開いたドアを閉めると、数歩足を進めてレジカウンターに近づく。 まだドアに取り付けてあるベルが微かに鳴り響いているけれども、それ以外物音一つしない。 …まぁ、お客さんもいなくてその上店主も居眠りしてればするはずかないけど。 「あのー…すみません?」 「・・・ぐぅ」 「起きやがれってんだこのダメ店主」 近くにあったいかにも分厚く重たそうな本で思い切り頭を叩けば、 カウンターで突っ伏して寝ていた店主さんがようやく「いてぇ…」とか言いながら顔を上げた。 「んー…あぁ、もしかして三波さん?」 「そうです。お久しぶりです店主さん」 笑顔で答えつつも、店主さんに気付かれないように手に取った本を戻し、挨拶をする。 結構昔からここに来てて、私は常連で、店主さんと仲良しだ。 ここの店主さんは…いっつも居眠りが習慣になってて、 お客さんもなかなか来ないのに、何故か潰れない…変な古本屋さん。 そして―― 「三波さんが来るとは思わなかったよ…あの子が失踪した場所だから」 冷えた麦茶を一杯もらって、私は一口飲んで苦笑いを浮かべる。 確かに、店主さんの言うとおり…ここは、が消えた現場。 だから何と無く此処には来たくない、と思って避けていた。 でも、ここにこそ私が求める真実がある気がしてならないんだ。 「…店主さん。ひとつ聞きたいことがあるんです」 「?なにかな?」 「が、消えた時のこと、詳しく聞かせてもらえませんか?」 他者からきいた大まかなことだけじゃ、多分私が求める真実なんてないだろうと思う。 の存在は私のとって大きかった…だから、今度は自分から調べるべきなんだ。 「――確かなぁ。バイト始めてもらう前に、本を棚に納めてもらおうとしたんだよ」 あえて、何故私がそれを知りたいのかは聞かず、店主さんはポリポリと頭を掻いてそう言う。 言葉の歯切れが悪いのは、やっぱり時が経ってることが原因なんだろうなと、聞きながら思った。 「頼んだ後、奥の部屋に引っ込んで…それで物音がして戻ってきたら」 「…いなかったんですか?」 店主さんは、肯定の意味で首を縦に振った。 そして更に一度唸った後に、詳しい話を口にする。 「三脚だけ倒れてて、本も、あの子も、あの子の荷物も無くなってて」 「――あの、そのしまうように頼んだ本って・・?」 さっきから引っ掛かっていた。 話の流れから行けば、の失踪にその本が関わっている気がしてならない。 …寧ろ、そうでないとおかしいとも思う。 「うーん…何の本だったかな…?数冊あってね。どうしても…」 唸る店主さんを見て、私も静かに考えてみる。 まぁ、多分店主さんがその本たちの題名を思い出すことは無いだろうな、と推測する。 思い出せない本が、イコール抹消されたあの本の事なら間違いなく。 「そうですかぁ…分かりました。あ、もし思い出したら今度来た時教えてくださいねー」 これ以上いても、多分店主さんからの情報は出てこないと思うし、 寧ろご迷惑(である確率はすごく低いだろうけど)だろうから。 カバンを手にして、失礼しまーす。と軽い口調で挨拶をして店外に出ると、 閉じるドアから「又来てくれよー」とやる気の無い声が聞こえるのと同時に、夏の熱気が返ってきた。 「熱っ…!」 直には炎天下に飛び出す気になれず、ふぅ、と深いため息をついた。 やっぱり確定した情報は得られなかったなぁ…。 それはそうだ。もし、あの赤目少年ととの関係を繋げるのなら、 その間には必ず"ハリーポッターシリーズ"の存在が不可欠なのに、それを消されてしまっては。 「どうしようもないよー…」 「分かってて態々ここまで足を運んだのかい?さん」 ・・・・誰かの声がしたのは気のせいですよね?そうだと言ってください神様仏様天神様ゼウス様! だけれども、ゆっくり顔を動かせばそこには情報を抹消した張本人(爽やか笑顔装備)の彼がいて。 何処までも私行く先を知ってる彼が、何と言うか…小憎たらしくなった。 「まぁ、僕はどっちにしろけいさんとは話をつけなくちゃいけないと思ってたからね」 さぁ、行こうか。と言うと赤目青年は私の手首を強引に掴んで――移動を開始する。 「え、あ、待ってよ…待てっていってるじゃないーー!!」 ろくに私の承認も取らない(取ったとしても無視されるだろうけれども)彼にそう叫んでみる。 何でこうも私は彼に振り回されてばかりなのかと思いつつ、 ズルズルと炎天下の中を引っ張られて移動を開始した。
けっこう長くなりましたー。久々にUP。 リドルの口調がね、最近分からなくなってきました…! 気に入りましたら、ワンクリック!→コチラ!

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