「な、…何するんですかっ!」


涙を浮かべてそう、叫ぶようには怒りをぶつけた。

くすんだ銀髪の彼が、の目の前にいた。
何故か満足げな笑みを浮かべながら、と同じく額を押さえている。
まだうまく開くことの出来ない瞼の間から涙が出て、は空いている手で拭いながら、言う。


「痛いですって!朝の起こし方は優しく行きましょうよ、ね!」
「何時まで経っても起きない貴方が悪いのですよ…?」
「でも――何で頭突きなんですか!


予想で起こされた手段が"頭突き"だと思ってそう彼に言えば、クスクスと笑われた。
……やはりそうだったのかと知ると、急にぼんやりとしていた怒りが鮮明になり、言った。


「いきなりはそんなの無しです!」


そう言いきり、はハァとため息をつき時計を見て――愕然とした。
今現在デジタル時計で、四時半過ぎ。
…もう一度言うが、四時半だ。明け方の。

正直、この真実で結の怒りは更に激しく燃え上がった(顔に出さない様に努力するが)
実のところ、彼への対応とその他片付けによりが眠りについたのは一時間前なのだ。
…つまり相当の寝不足な上、その原因を作った彼に荒い起こされ方をした事により――。


「何時だと思ってるんですか!私は貴方の世話して忙しくて少ししか寝てないんです!
 お話なら私が起きた後に好きにしてください……ではっ!」


バサリと、さっきまで彼が被っていた布団を強引に掴むと、さっさと目を閉じて寝始める。
何か無償に腹が立って、痛む額の事など無視してスッと、意識を闇へと手放した。






――…は、ものすごく後悔した。

夢の中で、言葉が響く。
私を殺そうとしてたじゃない!
…ノリで寝るんじゃなかった!
寧ろ殺してくれと言っているようなもんだ!


気付き、起きようとしても起きれない。
意識があるのに体が言う事をきかず、瞼も上がらない。
もがいてもがいて、必死になる……。


「っ!」
「おや…お目覚めですか」


ガバッと起きれば、何を考えていたのか、此処がどこなのかと言う情報を結は忘れていた。
しかしその途端、声を掛けて来た彼――明智さんを見てすべてを思い出す。
いや思い出したはいいが、は彼がしている行動に驚いてしまい、即座に訊いた。


「…何してるんですか?」
「いえ、何となく……とても暇だったのですよ」


何故か、彼は近くにあったであろう広告チラシで折り紙をしているのだ。
腰掛けている布団の上には、鶴と鞠が三つずつ転がっていた。
……なんか、かなりギャップがあるんですけど。何でそんな事してるんですか。


「お上手ですね…容姿とは不似合いですけど
「ふふふ…それはお互い様でしょう。貴方も、ひ弱そうなのに強気でしたねぇ……」


褒められているのか貶されているのか結には分からないが、とりあえず布団を横にそらして
寝ている間に少し乱れた服を調え、ふぅ、と息をついてから、言う。


「お待たせしました…では、何から答えればいいですか?」


は、自分が発言した言葉に対して、クスクスと笑った明智さんにゾワリと寒気が走った。
……その楽しそうな、彼が、綺麗だった。






明智偽者警報
彼を前にして寝れる彼女にばんざい。