自分の無謀さに、はため息をついた。 カタン…と音を立てて、は気絶している彼――明智さんを横にして、自分も数歩後退し、その場に崩れるようにして座り込んだ。 無理も無い。一般的な女子高生であるが、人に見られると言う恐怖の所為で一度も休まず、自分より上を行く体格の人物を約数十分引き摺り続ければこうもなるだろう。 玄関と各部屋へ繋がっている廊下の所に明智さんを寝かせていたが、そうさせているにも行かず、 倦怠感がまだ拭えない体を立ち上がらせて、彼の近くに腰を下ろす。 「今からすべき事……とりあえず、防具外しから?」 そう言うと、身を乗り出して赤い物がべっとりついている凄い装飾がされている肩当に手を伸ばす。 しかし、あ、と何かを思い出し、せっかく腰を下ろしたのにも関わらず、すぐさま立ち上がり、電気が ついていない静寂のリビングへと歩いていった。 しばらくして、数枚の濡れタオルとバスタオル、そしてかなりの量の新聞紙を持って戻ってきた。 は再び彼の傍らに膝をつき、新聞紙を床に広げスペースを作り、そうした後に肩当に手を伸ばし、かちゃりと音を立てて外す。 「…にっしても…重たい……!」 手に持った瞬間、予想以上に重たいそれに驚き、それと同時にちょっとは後悔した。 あぁ…鎌のようにあの場所に隠してくればよかったと。 そんな考えを巡らせながらも、床に広げた新聞紙の上に肩当を二つとも置いてから、 近くの部屋の中に移動させ、次の作業に移る。 「どうしよう……このまま布団に連れて行くのも手だけど ルミノール反応出るとそれはそれで嫌だからなぁ……」 相手の容態より以前に、血の後処理の面倒臭さが嫌だと言うは、ふぅとため息をついた刹那、 次にすべき事を頭に浮かべてサーっと顔から血の気が引いた。 血が嫌→この場で済ませたい→血痕付きの服を脱がせなければならない……。 ・・・ ・・・・・・しかたない。 そう、あっさり恥じらいを捨てきったは再び電気のついていないリビングへ走って行き、 家にある中でも一番大きい服上下を手に持ち、今度は荒々しく明智さんの隣へ座り込む。 ……相手は美形だ(見れば分かる)だからなお一層、乙女として、女子高生として、一般人として、 自分がやろうとしている事が無謀だと分かる。 「……天の神様。私に下心はありません。 ただの人助けです、人助けなんです」 わざわざ二度も言って強調させる必要は無いが、は再び天に祈った後…彼の服に手を伸ばした。 気絶している明智さんの隣で、はブルーオーラを漂わせて、沈んでいた。 しかしが根性で頑張った成果は、肌についていた血も綺麗に拭われ、黒いTシャツと白い長ズボンを穿いている明智さんを見ればよく分かってもらえるだろう。 「泣きたい…泣きたい…泣き潰れて三途の川に流されたい」 本当はそのまま三時間か、もしくは朝まで居たい気分だが、そんな我侭が通用するはずも無く、 は再び寝かせている明智さんを背に負ぶって再びズリズリ引き摺っていく。 防具を外して軽くなったはずの彼だが、の背にはその十倍もの重さが圧し掛かっていた。 帰 進 |