さーっと、風が吹き、木の葉が地を這った。 の目と口は大げさなほど開いてしまっていた。 今前方の外人コスプレイヤーはとても奇妙な事を口にしたのだ。 しかし、驚きで固まってしまったに大して彼はさも愉快そうに笑う。 「おやおや…そんな顔しないでくださいよ…」 "そんな顔"をさせた張本人が言う台詞ではないだろう。 だが、その顔が継続できるはずも無く、通常に戻せばビリビリとする皮膚を手で押さえた。 明智光秀――無関心である事が多いでも、学校教育上出てくる有名人位は覚えている。 確かお偉いさんにクーデター起こして、頂点に上り詰めたのにあっさり殺られちゃった不幸人。 「…やっぱり貴方は悪霊です!」 「おや、まだ言いますか…いい加減にしてください」 相手の格好やら雰囲気やら、微かに見え隠れする殺気を完璧に無視して、は"この人悪霊説"を相変わらず貫いていた――無念人、明智光秀ならこんな悪霊になって現れる事が出来る! と言う論を出してしまったからである。 「じゃあ、おかしいじゃないですか! 今時そんな大鎌もってるコスプレイヤー見たこと無いですし! そもそも、明智光秀と言う方は何百年も前に亡くなってるんです!」 自分が死んでいる事を自覚していないらしい(自称)明智光秀に対して、はそう言い放った。 脳の記憶装置である海馬の中では、明智光秀の様相がそっくりそのまま前方の男に摩り替わって しまったので、どうしようもないしだいである。 「おや…私は生きていますよ?何を仰るのですか?……では――」 その言葉が耳に届いた瞬間……目にも留まらぬ速さで悪霊明智がの首に鎌を突きつけていた。 ぎくりと驚きで目を見開けば、身を低くしている彼の眼と口元が同時に笑った。 「――…貴女が死ねば、本当に私が亡者なのか分かりますよねぇ?」 眼が急に本気になった彼に、はようやくぞわりとした感覚を覚えた――恐れの感情を。 この際だ。もう彼が生きている事を認めようと決めただが、口に出してそれを告げられない。 クク…と言う笑い声と共に、低い体勢から、より高い長身に戻し…鎌の刃を口元にあてる。 「血は美しい…その中で濡れる貴女はさぞ美しいでしょう…フフ……」 そう言うと、ゆっくりゆっくり口元に当てた鎌を高く掲げて、一言。 「死んでください――愚か者」 眼を閉じ、死の覚悟と共に、は心の中で一言唱えた。 ――…神様…あんたは、殺生だ。と 帰 進 |