「僕のために何かお菓子を作ってよ。」
これが事の発端だった。
あなたのために
・は、OWL試験が終わってホッとしている5年生のうちの1人だった。
そして苦手な魔法薬学の試験を終え、一息つこうとベッドに横になり、目を瞑った時にいきなり聞こえた。
「如何して貴方が此処にいるの。」
いきなり現れた声の主に驚いてはいたが、はまたいつもの表情に戻った。
「いつもの事だよ。しかしの部屋は一人部屋で良いね。色々やりやすいし。ダンブルドアもたまには良いことするね。」
そう言った彼の名前はトム・リドル。
頭もよく、顔もいい。監督生でもあるから、女子からは凄い人気だ。
そんな人気者にも、実は幾つか隠し事があった。
一つ目は、完璧にマグルを下等な奴としてみている。
二つ目は、実はこの前秘密の部屋を開けちゃった。
そして三つ目。そんな彼にも本気で好きな人がいる。
その相手が・だった。
しかし当の本人は、スリザリンにいながらも純潔主義者でもない。逆に友好的で、寮を問わずに皆から好かれていた。
そして皆同等に接していた。
それに、スリザリンの監督生でもあった。
頭もよく、クィディッチでも活躍していた。
そんなを振り向かせる為に、リドルはありとあらゆることをしてきた。
そしてそんなリドルがも気になり始め、めでたく2人は恋人同士となったのだ。
リドルファンからも、ファンからも、あの人なら許せる、というのがあるらしく、祝福してくれていた。
そんなリドルがの部屋にやってきた。
「いい加減にして。男子は女子寮には来ちゃいけないはずよ。」
「だけどたまに何としてでも入りたくなる奴とかいるだろ?
そいつから僕はを守る義務がある。」
は、それはアンタだと言いたくなったが抑えた。
「で、さっきのは何?私が料理が苦手だって知ってての発言かしら?」
はあくまで優しくゆっくり言った。
「確かに最近までそう思ってたけど、さっき僕と同室だったラドルフが言ってたんだ。
これ、から貰ったお菓子なんだ〜、ってね。
如何して彼氏の僕にはあげないで他の奴なんかにあげるのかい?」
リドルはニッコリと笑いながらに近づいた。
そんなリドルから常に一定の距離を保つようにして離れていった。
「まぁその言い分も分かるけど、それには訳が――」
「訳なんて要らないんだよ。とにかく僕に作ってよ。」
黒い笑顔を浮かべてリドルは言った。
でもは、此処で食い下がるわけにもいかないと思い、何かしら理由をつけて断ろうと考えた。
「でも私、本当に出来ないし、もしかしたら毒盛っちゃうかもよ?」
「が作るものなら、例え毒でも全部食べてあげるよ。そうだね。全部。」
そう言ったリドルがニヤリと笑ったのを、は見逃さなかった。
「それに私、料理できない上に、作るとしてもマグル式よ?リドル、貴方はマグルが嫌いでしょ?」
「マグルが作るわけじゃないからね。作るのはだから。」
そう言って、リドルは何としてでも作らせようとしていた。
「もう、分かったわ。今から頑張って作ってくるけど、貴方はここで待ってて。絶対に此処から出ないで。」
がそう言うと、リドルは優しく笑った。
「いいよ。じゃあ、此処で待ってるから。」
そう言うと、リドルは、頑張れ〜、と言って手を振った。
そしては部屋から出て行った。
***
は、部屋を出て校内にある厨房へ向かった。
そしてそこで、大勢の屋敷しもべに見守られながら、料理本を片手に考えていた。
「やっぱりラドルフにあげないで、自分で食べちゃえば良かったかな・・・。」
ため息をつき呟いた。
それでも、作ると約束したからには作らなければいけないと思い、作業を開始した。
そして時には黒焦げになりながらも、何とか作ったものを部屋へ持っていった。
***
部屋に着くと、ベッドに腰掛けて寝ているリドルがいた。
「遅すぎて寝ちゃったかな。」
部屋を出て行ってから1時間半ちかく経っていた。
そのうちにリドルは眠ってしまっていた。
起こすわけにもいかないので、もリドルの隣に座った。
するとリドルは目を覚ました。
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
慌てては立ち上がろうとした。
が、リドルに手を引かれ、再び座ってしまった。
「大丈夫。それより、作ってくれたんだ。僕に。」
ニッコリと笑ってリドルは言った。
「味の保証は全くありませんが、いちお。」
そう言っては、今作ってきたスイートポテトをリドルに差し出かけた。
が、直ぐに引っ込めた。
「ねぇ。何で前に私がラドルフにあげたか分かる?」
いきなり言われたことに少し驚くリドル。
それでも優しい口調で答えた。
「さぁ。僕には分からなかったね。」
「理由は知りたい?」
は言った。
「知っておいて損はないね。」
リドルがそういうのを聞くと、はリドルの横に座り直して言った。
「この前、女の子が男の子にクッキーあげてるのを見て、私は何もリドルにしてあげてないなぁと思ってね。
でも私、料理苦手でしょ?
だから練習して、上手く作れるようにしようと思って、こっそり厨房で練習してたの。
それで出来たものをラドルフにあげてね。」
味に保証はないし、リドルに何かあったら嫌だから。」
そう言っては笑った。
「でも、リドルが食べたいって言ったんだから、もう知らないよ!」
そう言っては、スイートポテトを差し出した。
差し出されたスイートポテトを手に取るとリドルは言った。
「僕はねぇ、が手を切っているのに気づかないほど必死に作ってくれる料理なら何でもいいよ。」
そう言うとリドルは、の左手を手に取った。
それに気づいていなかった<は、それを見るとあっ、と言った。
確かに左手の人指し指が切れていた。
そしてリドルは、切れている所をペロッと舐めた。
「でも僕は料理よりが欲しいな。」
その言葉に、は一瞬顔を赤く染めたが、直ぐに手を引っ込めて言った。
「今日は駄目です。それなら出てって。」
そう言ってはリドルから離れた。
「まぁ今日は諦めてあげるよ。今日はね。」
そう言って、リドルは本当に残念そうに笑った。
「そうだ。じゃあこのお礼は後日、別の形で返してあげるよ。」
そう言ってリドルは笑った。
その笑顔に、思わずは後ずさった。
―――――おまけ―――――
その後リドルは、手に取ったスイートポテトを食べてみた。
するとリドルは黙り込んだ。
「ねぇ、やっぱりヤバイ?」
は心配そうにリドルに言った。
「知りたいなら食べてみる?」
そう言ってリドルは手に持っているスイートポテトをに渡した。
受け取ったスイートポテトを食べてみる。
瞬間には咳き込んだ。
「何コレ!しょっぱいじゃない!!」
「そうみたいだね。」
咳き込みながら言うに、リドルは冷静に答えた。
「砂糖と塩、間違えてるね。」
その時リドルは、やっぱりこの人に料理を頼むのは止めた方が良いと思ったらしい。
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「夢の向こうへ」