「こっちのハロウィンは騒がしく無くていいね」

彼はそう、小さく呟いた。





彼の笑みが既に罠。





一時限目が始まる少しの空き時間の事。

科学のレポートに手をつけているリドルは、教えている私にそう言った。

いや、私にとっては今日は十分騒がしい(本場と比べてはいけないだろうけど)


廊下では頻繁に「トリックorトリート!」と言う声が飛び交っているので、

あえて出て行く気になれない……。





「〜、トミ〜♪」





何とも楽しそうな声色で私達に歩み寄ってくる渚。

わざわざ避けてる事態を、こうも簡単に持ってこられると何もいえない。

…単なる嫌がらせか。





「何かな?ナギサ」

「ふふふ〜…トリックorトリート!」





やっぱり来たかこの単純女が(言い方がちょっと惨い)

にっこり渚はリドルに向けて両手を差し出す。

なんだろ…正体知ってる私には狂気の沙汰にしか見えないです。





「はい、どうぞ。ハッピーハロウィーン」

「ありがと〜w…次」





なんだその表情を一気に変えて私に突如振る技は。

仕方ない…と言って私は鞄の中の飴を取り出す――が。





「…い」

「どうしたの〜?」





鞄を覗いた瞬間固まった私に対して、何とも暢気な声で渚は声をかけてきた。


重 大 事 件 発 生 ! 

お菓子忘れたよっ!!





「ご、ごめん忘れた…」

「あーらー。じゃあ悪戯で良いんだよね?」





瞬時に黒くなるわが友人N…い、いいじゃない今日ぐらい!

私がアワアワと慌てていると、何か考え付いたようにリドルが言う。





「なら僕も"トリックorトリート"」

「えぇぇぇぇ!?」





何故か私がお菓子を持ってない真実を知った途端に、

明らかに悪戯目当てで決まり文句を言って来たリドル青年。


…い、いじめかこんちくしょぉぉぉ!!





「――な、何をすればいいですかね」

「ん〜…アタシは地理・理科の三回目のレポート手伝いw」





それって悪戯と言うか寧ろ命令じゃないですか・・?

盛大にハァーとため息をつくと、渚は満足したのか次のターゲット

(予想は安城君だ…心で経を唱えておこう)





「…何が良いかな…」

「真剣に悩まないでくださいお願いですから」





と言うか渚のレポートはどうせ手伝わなきゃいけないから了承したけど…

君のトリック(悪戯)は本場テイストじゃないかと不安になるんです!

しばらく「ん〜…」と唸っていた彼だが、しばらく経った後言った。





「じゃあね――今度さんの家に招待してくれないかい?」





…はぃ?!

どう言う風の吹き回し?と言うかどう言う考えの下でですか?

散々最悪の事態を考えていた私に、彼の要求は思った以上に軽くて。




「ま、まぁいいですけど…」




そう言うと、私は教科書に目を落とした。

なんか……うまくだまされた様な気がする。

顔を上げれば、再びリドルの微笑みがあったので、やはり急いで顔を伏せた。









「――…さん。完璧に気付いてなかったね?」




を置いて、廊下で話し合うリドルと渚。

両者、何とも言えない微笑を浮かべ、言葉を交わしている。





「あんなにうまく行くと思ってなかったんだけどねぇ〜」





そう言って、渚は手に持つ飴袋をゆらゆらと揺らす。

…もちろん、それが無くなって困った人物を知っている上で。




「まぁ、いい取引だったと思うよ」




リドルはそう言って、微かに怪しげに微笑んだ。

そして…こんな裏取引があったなど、当の被害者は知る由も無かった。








あとがき
ひとつ突っ込むなら、さり気なくさんが可哀想(でも作者&策士達うれしそう)
しかし――どんなハロウィンよ…!?
フリーなので、勝手にもっててくださいな〜。
(※直リンクで無い場合は、背景差し替えてください〜)