やばい
 迷った
「ぴかぁぁ(りどるぅぅ)」
 何がいけなかったんだろう?
 やっぱりあれか?
 リドルとエリザが良い雰囲気で話してたから気をきかせたのがいけなかった?
 いやいやいや、あれは友人としては当たり前の行動だ。
 友人の淡い恋心、端から見て両思いは間違いないのにそれに気付かない二人の仲。
 僕がいちゃ素直にいちゃつけないだろうから席を外したのに・・・・・・・・・・・・
 たぶん大丈夫という微妙な確信でうろついたのがいけなかったな、うん。
 でも・・・・・・・・・・・
 流石に迷って3時間は長いよね
 行っても行ってもつきない廊下。
 これが人間サイズだったらまだ周りの風景とかで来た道とか分かるかもだけど、あいにく僕の視界はほとんど変わらない地面から30p。
 リドル達もそろそろ夕食の時間だから僕を捜してくれてるだろうし、ここは動かず待っていた方が良いのかな?
 う〜〜ん・・・・
 ってか生徒誰一人として出くわさないってのがおかしいよね。
 だれでもいいから出くわせば、それとなく付いていって帰れるのに。
 もしくは誰かの頭の上に乗るとか。
 出来るならスリザリン生(僕がリドルの友達だとだいたいみんな知ってるから)。
 もしくはハッフルパフ生(根が優しいし、エリザの寮だから)。
 レイブンクロー生でも良いけど、グリフィンドール生だったらちょっと気まずい。
 というわけで
「ぴっかあーー!?!?!(誰かいませんかー!?!?!?)」
 が、やはり甘かった。
 何故に誰もいない!?
「ぴっかちゅー?(僕このまま迷子なのー?)」
 このままこの広いホグワーツで迷子・・・・
 動き回れば動き回るほどに何故か静かな所に行っている気がする。
 迷子の神様にでもとりつかれてるのか?僕・・・
「・・・ぴかぁ・・・(・・・リドルぅ・・・)」
 うぅぅ・・・なんか目がにじんできたよぅ
 もう泣いてしまいたい。
 けどそんなことで事態が変わる訳じゃない。
 でもやっぱり悲しいし寂しい・・・・・・・・
「あの、君?」
「ぴかっ?(ぅえっ?)」
 マジで泣いちゃいそう、と思ったとき、僕の耳に小さいけどはっきりした声が聞こえた。
 ばっと振り返ると、そこにはいつからいたのか髪の長い女の子が立っている。
 言葉なく呆然と見上げていれば、その女の子はにっこり僕を安心させるように微笑み、ゆっくりと口を開いた。
「もしかして、飼い主さんと迷った?」
 救いの女神ーーー!!
 迷子の神様僕を見捨ててくれてありがとー!!
 僕は急いで首を縦に振り、彼女の足下に駆け寄った。
「う〜ん…でも、私も一年生だから良く分からないの。取り合えず、ハッフルパフ生の飼い主さんじゃなさそうね」
 申し訳なさそうにそう言うけど、僕にとってようやく会えた生徒。ついでにハッフルパフ生。
 ここにいるのは、彼女のおちついた態度から迷子ではないと思う。
「…あら、耳に綺麗なカフスしてるのね。君」
 下から見上げていたら、彼女の視線が僕の左耳に行った。
 そして伸ばされた手。
 気にくわない奴だったら触らせないけど、彼女はたぶん大丈夫。
 少しくすぐったいけど、見やすいように若干首をかしげ耳を立てる。
 えへへ、綺麗でしょ?
 リドルの目と同じ紅。
 僕が一番好きな色だよ!
「…グリフィンドール生が飼い主さん!」
 ・・・・・・・ぅお?
 なんでグリフィンドール?
 ・・・・・・・・・・・・・ああ、そういえば赤はグリフィンドールの色でもあったね。
「ぴかぁ、ぴかぁっ!!(この赤はグリフィンドールじゃなくて、リドルの紅!!)」
 違う違うと高速で首を横に振れば、彼女は少し驚いた様子で、だけどにっこり笑って納得してくれたみたい。
 すると今度は僕をどうしようかと悩み始めた。
「今、夕食前だからなぁ……出来れば君を大広間まで連れて行くのもちょっと考え物だなぁ…」
 え?なんで?
 リドルは普通に連れていってくれるけど・・・・
「…取り合えず、適当に歩いてみようか。君の姿だと、目立って飼い主さんが気付くかもしれないし」
 ああ、なるほど。
 リドルも僕を捜してるだろうから(確信)下手に大広間に行ってすれ違いになったらたいへんだもんね。
「ぴかぁ!(お世話になります!)」
 そう返して、ほとんど反射的に彼女の肩に飛び乗った。
 飛び乗ってから気付いたけど、僕重くないかな?
 リドルといたときは自然にこういう感じだったから気にした事もなかったけど、女の子に僕は重いんじゃないだろうか・・・?
「…少し目立つけど……いいかな?」
 だけど彼女は特に気にした様子もなく、すんなりと立ちあがった。
 そして僕の頭を軽く撫で、迷う泣く足を動かし進みだした。
          □          □
 しばらく彼女の肩に乗っていて、ふと思い出した事があった。
 エリザが少し前に話していた東洋からの留学生『神崎 』。
 まっすぐ長い黒髪のストレートに、淡々とした落ち着いた感じの女の子。
 寮の部屋が近く、時折一緒に勉強しては話しに花を咲かせるエリザの『お友達』。
 もしかして彼女のことじゃないのかな?
 だって最初会ったときから違和感感じてたんだ。
 入学式でも僕はリドルと一緒にいてそこそこ目立ってたし、ほとんどいつも僕はリドルと一緒にいた。
 だから僕たち二人はなんだかんだで有名だし、知らない人はまずいないとリドルは言っていなかっただろうか?
 なのに彼女は最初会ったとき僕を知らない様子だった。
 それに加え僕の飼い主(友達)を知らないと言って、今一緒に探してる。
 エリザから聞いた『神崎 』は、興味ないものにはさっぱり記憶しないらしいし、やっぱり彼女は『神崎 』なのかと微妙に確信。
 現に時折すれ違う生徒は僕がリドル以外の頭に乗ってるのを不思議そうに見ているし。
 と、そんな事を考えていたら懐かしい匂いがした。
「ぴっ」
「どうしたの?」
 僕が唐突に上げた声に(仮)ちゃんは足を止め、僕を見上げてきた。
「ぴかぁっ!(リドルの匂いだ!)」
 だけど僕はリドルの匂いが近くにある事の方が嬉しく、後先考えず(仮)ちゃんの肩から飛び降り前方の曲がり角を曲がった。
 そして思いっきりジャンプして体当たり。
「ぐはっ!」
 リドルだリドルだリドルだ!
 当たり所が悪かったらしくリドルは顔を押さえて尻餅をついてしまった。
 でももう片方の手で僕を支えてくれて、安心したように小さく息を吐いたのを僕は聞き逃しはしなかった。
「……。相変わらずの石頭だね…」
 少し皮肉が込められてるけど、それでも隠しきれない安堵の声。
 リドルも僕を捜してくれてて、会えた今心から安心しているという事に僕は更に感激。
「ぴかぴかぁ!(会えてよかったぁ!)」
 いつものごとく感激の頬ずり頬ずり。
「あ、あのっ」
「…ぴかっ!……ぴかぴかっちゅーっ!(・・・忘れてたっ!・・・・・・リドル、彼女が僕を連れてきてくれたんだよ!)」
 リドルから体を離しつつも、胸に手をつき、(仮)ちゃんを振り返りつつジェスチャーで説明。
 苦笑しつつ顔から手を外し、リドルは視線を僕から(仮)ちゃんに。
「もしかして、君がを?」
「…そう、四階の廊下の辺りで迷っていたので、飼い主である貴方を探していたんです!」
 え、僕4階にいたの?
 ちょっと驚愕してたらリドルは(仮)ちゃんの手を借りて立ちあがった。
「…ありがとう。君、名前は?」
「・神崎。貴方は?」
「……トム・M・リドル」
 おぉ、やっぱり彼女は『神崎 』ちゃんか。
 そしてやっぱり僕たちの事を知らず、名前を聞かれたリドルはビックリした様子。
「…彼の名前、君だったんですね」
「そうだよ」
「ぴかっ!(よろしくっ)」
 んー、よし。
 リドルの腕から飛び上がり、再び僕はちゃんの頭の上。
「あら」
「ぴかぴかっ!」
「あっ、駄目だよ!」
 リドルが手を伸ばして僕を引きはがそうとしたけど、楽しそうな僕を見て少し寂しそうに手を下ろした。
「…なっ、懐かれちゃいました?」
「――…そう、みたいだね」
「あの……夕食の時間が近いので、このまま大広間に行きませんか?」
 よっし!僕の思った通り。
 リドルはちゃんのその発言に驚いたようで、じーっと僕を見て、ちゃんに視線を移して。
「そうだね。も楽しんでるみたいだし…」
「行きましょっか」
 少しふてくされたような声に内心頭を下げつつ、僕はリドルににっこり笑った。
 だってさ、ホグワーツに来てからリドルに出来た友達は同室の二人とエリザの3人。
 僕を入れて4人の友達。
 でもリドルはこれ以上友達を作ろうとせず、正直言うと僕はちょっと寂しかった。
 でも、かといって誰でも良いからリドルの友達になってくれなんておこがましいし、リドルはそんな相手を友達とは認めないだろう。
 だけど彼女なら、ちゃんなら大丈夫だと思った。
 なによりエリザの友達だしね。
 友達は少ないより多い方が良い。
 だから僕はリドルとちゃんに友達になって欲しかった。
 なにより、僕がリドルの髪質と似た彼女の髪を結って遊ぶためにもね。
<オマケ>
「あらリドルににさん、珍しい組み合わせですわね」
「あー・・うん、なんかが懐いちゃって」
「エリザ・・・・の友達だったの?」
「えぇ、何度かお話になりましたでしょう?私のお友達ですわ」
「・・・・・・・・・そういえばそんな話した気が・・・・・」
「この様子ですとリドルも忘れてましたわね?」
「え?・・・・・・・・・・ああ、今思い出した」
「ぴかぴ!(僕は覚えてたよ!)」
「あら、は覚えていたようですわ。」
「「!?」」
end
 触発されまして書いてみました。
 「黄色き彼に・・・・・」のサイドです。
 洸月様のさんをエリザ嬢の友人にしてみました。