どうしてこう言う状況になったのか。

とりあえず、精一杯がんばるしかないみたいですが。





「彼に手解きを〜料理について〜」





ドサリと、重たい買い物袋をテーブルの上に置き、ふぅとは一息ついた。

中を覗けば、ジャガイモやらにんじんやら…そして少し量の多い鳥のムネ肉。



「あぁ…なんて柔らかそうなんでしょう……」



そしてさり気なく袋の中に手を伸ばし、鶏肉のパックを何とも愛おしそうに見つめる彼。

…何故かの家に居候している明智光秀である。



「…そんなに見てて楽しいですか?鶏肉」

「ふふ…ええ、とても……切り裂けば何ともいえない感触なのでしょうね」



怪しい笑みと会話をする光秀に、は多少ため息をついて言う。



「今日は、一緒に肉じゃがを作りましょう…」



そう言ったものの、隣にいる協力者は相変わらず鶏肉に見惚れている。

(できれば豚肉で作りたいと思ったが、光秀があまりにも目で訴えるので鶏肉になった)


ふぅ、とため息をついてから、は壁に取り付けているフックに掛けているエプロンを取り、

一枚は自分の手に、もう一枚は光秀に渡す。



「汚れたら大変なので、これをしてくださいね……えっと、こう」



そう言って自分で先にお手本として身につける。

それに続き、光秀は一発できれいに着こなした。

……まぁ、綺麗な顔にクマのプリント入りエプロンはどうかと思うが、気にしないでおく。



「あ、あと料理をするのにその長い髪は……後ろ向いてくれます?」

「ええ、どうぞ」



そう言って素直に後ろを向いた光秀に、は手にしていた髪ゴムで銀の長髪を結わえた。

…長すぎて、あんまり結ぶ意味がなかったのではないかと雨宮は内心思った。



「えーっと、それではまず「肉を切るのですか?」



料理開始!と意気込んだのにも関わらず、光秀はの発言を遮ってそう言った。

…怖い、目が本気だ。っていうか逝ってる。



「…わかりました、肉から切りましょう。そこにある包丁を使って一口大に切ってください」

「おや、私の鎌のように美しい刃ですね……」



――なんか言ってるよこの人。そもそも持ち方が危なっかしい。



「ちゃんと使い方分かってます…?」

「ええ、ご心配なく……ふふ」



もの凄く不安ですが、とりあえず光秀に肉は任せては野菜関係の方を担当する。





「フフフ…」

『サクッ…』

「あぁ…何という柔らかさ……」



怪しい声と共に、後ろで肉を切る音がします。



サク…サク…

サクサクサク

サクサクサクサクサクサクッ……




……速度上がってません!?



「明智さん!?……あーあ」



が予想した通り、鶏肉は一口サイズよりかなり小さく、後一歩でミンチ肉になる寸前まで切られていました。

…食べ物で遊ばないでください。明智さん。



「これは失礼…フフ……いささか調子に乗りすぎました」



笑みが含まれている所為か、反省しているようには見えないんですが。





〜§〜




「…な、なんとか出来ましたね」



皿によそった完成品をみて、は安堵の息を漏らした。


…流石に先刻のミンチ事件の所為で、光秀に料理はまだ無理だと判断したので。

隣に立たせて、まず料理手順をしっかり覚えてもらうことにした。



「どうでしたか、明智さん。こっちに来てからの初めての料理は?」



そうエプロンをはずし、髪ゴムを取ろうとしていた光秀はいつもの笑顔で言った。



「とても愉しかったですよ?…また、切らせてくださいね。フフ…」



………私が教えた料理手順はどこにとんでいったんですか。



の家で、光秀の料理が食べられる日は、まだまだ遠いようだ。



End




あとがき
…短いような、妙にハショってると言うか…。
すまん、ゆるしてたもれー。
(明智さんは、きっとハンバーグしか作れないと思う)