ピッと言う効果音の後、は大分ガタが来ている自分の携帯電話を閉じ、 少し離れた場所に居た明智に、微笑みかけながら言った。 「都合がつきました!大丈夫です!」 が電話したのは、彼女が勤めているバイト先に今日と明日急用で休むと言う事を伝える為だった。 あまり休んだ事が無いので、不思議がられたがとりあえず許可が出たらしく――今に至る。 「とりあえず、社会見学にでも行きますか。服は…上着を着ればいいですね」 「…見学、ですか」 「そうです、口で言うより見た方が早いんじゃないかとおもいまして」 明智の意見を聞く気がないらしく、既には適当な男物のジャケットを持って近づいていた。 確かに、百聞は一見にしかずというが…予備知識位入れて欲しいと、密かに彼は思った。 「あまり人が居ない所から行きましょっか」 マンションから出るまでの間にかなりの説明をし、そしてようやく道路に出た。 全ての物に対して明智は興味があると言う感じではないが…なりの気配りらしい。 そして人通りの少ない道で、近くの公園まで行くルートを考えた後、テコテコと歩き始める。 しかし、歩き始めて数分もしない内に 「…どうかされましたか?」 「あ、明智さん…歩くのはやいです…っ!」 ふい、と明智が振り返れば、少し息が乱れている。 確かに歩幅の違いはあるだろうが…明らかにの方が遅い。数歩歩くだけで直ぐ間があいてしまう。 歩くのをやめ、が追いつくのを待つ明智。 自分的には此れが普通。だが、には速過ぎると言われる。 「あ、明智さん…?」 「……こうしましょうか」 ヘッ?とが唖然とした顔で明智を見つめたその刹那――ぐい、と彼に手首を握られる。 は、突然の事に、それ以前に彼が真顔であるのに驚き、叫ぶようにして言う。 「な、ななっ…何してるんですか!?」 「いえ、これなら貴方も遅れないですし、私も分かりやすいですし」 「大丈夫です!頑張って歩きますから離してくださいっ!」 「…では、行きましょうか」 「人の話聞いて無いですよね!」 しかし、抵抗もむなしく男と女、兵と平凡な女子高生の差を突きつけられ、 ズルズルと、引き摺られるように進んでいく。 相変わらず、何を考えていてどう言う価値観で行動しているか分からない彼にため息を付くだが、 急に彼が止まった所為で、思わず体当たりをするところだったが、何とか踏み留まり、顔を見る。 「…そう言えば、今からどちらに行くのでしょうか?」 「――明智さん。誰かから"天然"って言われた事ありません?」 はハァ、とため息をつく。 ……こんな彼とやっていけるのかと、不安に思うのは当然だろう。 立場を逆転させ、今度はが走るようにして明智を引っ張っていく。 気恥ずかしい所為で、少し顔を赤らめながら。 明智さん。天然なのか、 サディストなのか分からなくなってきました。 帰 進 |